虎に新風を吹き込む男たち
開幕から5カードが終了したプロ野球。同リーグの全球団とひと通り対戦を終え、阪神は7勝7敗の勝率5割。何とも言えない滑り出しとなった。
今年も福留孝介や糸井嘉男といったベテラン勢の活躍が目につく一方で、入団2年目を迎えた2016年ドラフト入団選手たちの活躍が頼もしい。昨シーズン芽吹いたものが、ようやく蕾になりはじめたといったところか。
まず正遊撃手として活躍しているのが、2016年のドラフトで5位指名だった糸原健斗。昨オフは金本知憲監督も現役時代に通ったジム「アスリート」で体を鍛えぬき、遊撃手争いでは常に頭ひとつリード。オープン戦でも打率.283と、チームの打撃成績が低迷するなか好調を維持し、開幕スタメンの座を手中に収めている。
開幕後も打撃は好調。4月11日の広島戦では、二死死満塁という局面で粘りに粘って適時打を放ち、この日がプロ初登板・初先発だったルーキー・高橋遙人を援護してみせた。
早いカウントから積極的に打ちにいくスタイルの糸原だが、今シーズンはフルカウントから打率.400(5-2)で2四球と、追い込まれてからも粘ることができている。本来は三塁手であるが、遊撃の守備も日々進化中。年間を通して遊撃手の座を守り抜くことができるか注目だ。
先発ローテ希望の光
また、投手では2016年のドラフト2位右腕・小野泰己が好調。開幕までの実戦7試合・26イニングを無失点という最高の仕上がりを見せ、開幕ローテの一角に食い込んだ。
今季3戦目は雨で流れてしまったものの、ここまで2試合で1勝。防御率は2.92と好投を見せている。4月4日のDeNA戦では、8回途中1失点の好投で今季初勝利。圧巻は6回裏二死三塁のピンチで迎えた筒香嘉智との対戦だ。全7球のうち、5球が直球勝負。最後は外角高め・150キロのストレートで内野ゴロに打ち取った。
ルーキーイヤーの昨年は、打線の援護にも恵まれず12試合連続で勝ち星なし。プロ初勝利は8月末まで遅れるなど、苦しい1年を送っていた右腕だが、今年は先発ローテの一角として大いに期待していいだろう。
右打ち開眼!? 待望の和製大砲へ
そして、2016年の“ドラ1”といえば大山悠輔。開幕前には侍ジャパンに選出されるなど、成長著しい右の大砲が開花の気配を漂わせている。
片岡篤史ヘッド兼打撃コーチと二人三脚で取り組んできた成果が徐々に現れはじめ、自身が理想とする右方向への強い打球も目につくようになってきた2年目の大砲。実際、ここまでに大山が放っている本塁打2本はいずれも右方向へのアーチだった。ウェイトトレーニングの成果もあってか、右方向にも大きな打球を飛ばすことができている。
4月15日のヤクルト戦では、2番手の中尾輝から久々の適時打を放つなど、マルチ安打を記録。打率は2割を切ってしまっているものの、それでも打点はチーム最多の「10」。勝負どころで四球を選べる選球眼も、魅力のひとつだろう。
追い込まれるまでは引っ張りも意識、追い込まれたら右方向へ…。今年は打席の中に“2人の大山”が存在するかのようなバッティングスタイルで、「ヒットの延長がホームラン」というシンプルな打棒の掟を心掛けている。阪神長年の課題である和製大砲の誕生へ、大山には一歩ずつ着実に歩んでいってほしい。
ドラフト当初は様々な声があったものの、入団から1年経って“当たり年”と言われはじめているプロ2年目の若虎たち。2018年の阪神は彼ら2016年ドラフト組の活躍に注目だ。
文=弥武芳郎