強力西武打線を牽引する森友哉
4月18日、西武がまれに見る大逆転勝利を収めた。日本ハムを本拠地に迎えて行われたこの試合、8回表を終えた段階で0-8と大差のリードを許す敗戦濃厚な展開だった。ところが、その裏、球界ナンバーワンの強力打線が火を吹き一挙7点を挙げると、迎えた9回裏、無死満塁の場面で打席に入ったのは森友哉。石川直也の甘い真ん中直球をかち上げるような豪快なスイングでとらえると、打球は右中間を真っ二つ。これこそ劇的としか言いようがない逆転サヨナラ二塁打となった。
昨季の森はケガで出遅れ、復帰後もほとんどが指名打者での起用だった。しかし、今季は炭谷銀仁朗との併用ながらも捕手起用されることのほうが多く、ここまで19試合中11試合でスタメンマスクをかぶっている。高校時代からずば抜けた打撃センスで評価されてきただけに、森がどれほど打撃で活躍しようがいまさら驚くことでもないが、今季はまさに絶好調。3割打者が居並ぶ西武の超強力打線のなかで5番打者を務め、ここまでの打率.375はリーグ2位の数字だ(首位は近藤健介の打率.379)。捕手の森がこれだけ打っていれば、西武打線の厚みが増すのも当然である。
日本球界ではいわゆる“打てる捕手”不足が叫ばれて久しい。しかし、今季は森をはじめ打撃好調な捕手が目を引く。以下は各チームで打席数が最も多い捕手の打撃成績だ。
【12球団最多打席捕手打撃成績】
<セ・リーグ>
・会沢 翼(広島)
11試合35打席:打率.406(32―13)0本 3点
・嶺井博希(DeNA)
14試合48打席:打率.267(45―12)2本 9点
・梅野隆太郎(阪神)
18試合57打席:打率.136(44―6)1本 4点
・中村悠平(ヤクルト)
20試合76打席:打率.219(64―14)0本 6点
・小林誠司(巨人)
20試合61打席:打率.365(52―19)1本 9点
・松井雅人(中日)
14試合31打席(26―2)打率.077 0本 1点
<パ・リーグ>
・森 友哉(西武)
18試合74打席:打率.383(64―24)1本 10点
・甲斐拓也(ソフトバンク)
18試合57打席:打率.245(49―12)1本 8点
・清水優心(日本ハム)
13試合48打席:打率.216(37―8)4本 6点
・田村龍弘(ロッテ)
19試合67打席:打率.288(59―17)0本 7点
・若月健矢(オリックス)
13試合36打席:打率.267(30―8)0本 5点
・嶋 基宏(楽天)
17試合45打席:打率.184(38―7)0本 6点
小林誠司もいまだ高打率を維持
2割を切る低打率の捕手は梅野隆太郎(阪神)、松井雅人(中日)、嶋基宏(楽天)の3人のみ。会沢翼(広島)は石原慶幸、磯村嘉孝との併用ということで打席数こそ多くはないが、打率は4割を超える。また、開幕直後に打率10割と話題を集めた小林誠司(巨人)もいまだ高打率をキープ。過去2年は規定打席到達者のなかで最低打率を記録した小林。いわゆる“春の珍事”と片付けるのは簡単だが、本当に打撃開眼したのではないかと思わせられる好調ぶりだ。4月20日の阪神戦では先制打、続く21日と22日の阪神戦でもタイムリーを放ち、チームの連勝に大きく貢献した。
パ・リーグでは清水優心(日本ハム)の4本塁打が目を引く。市川友也を金銭トレードでソフトバンクに移籍させたのも、清水の打撃の成長があってのものだろう。また、開幕直後はなかなかヒットが出なかった甲斐拓也(ソフトバンク)、田村龍弘(ロッテ)もここにきてじわじわと状態を上げてきた。
さすがに古田敦也(元ヤクルト)、城島健司(元ダイエー他)、阿部慎之助(巨人)らがそろって活躍していた時代とは比べようもないが、今季は捕手の打席にも期待を持って注目してみたい。
※数字は4月22日終了時点
文=清家茂樹(せいけ・しげき)