チーム防御率は驚異の2.21!
大谷翔平の加入により、例年以上に注目が集まっているア・リーグ西地区。エンゼルスは下馬評こそ高くなかったが、“二刀流旋風”に引っ張られるように打線の勢いが止まらず、現在のところ地区2位と大健闘。そのエンゼルスに立ちはだかるのが、昨季の覇者・アストロズである。
現地時間23日(日本時間24日)からは両者による首位攻防戦が開幕。直接対決の第1Rはエンゼルスが2-0で接戦を制し、ゲーム差0.5と接近。奪首に期待のかかる重要な第2戦は、大谷が先発マウンドを託される。
アストロズと言えば、何と言っても昨季メジャー30球団中No.1のチーム打率.282を誇った超強力打線に目が行きがち。だがしかし、今年のチームを支えているのは、実は“投手力”なのだ。
今季ここまで24試合を消化したなか、チーム防御率は驚異の2.21。今季のメジャー平均が4.07というところからも、その凄まじさはお分かりいただけるだろう。2位のインディアンス(2.57)を大きく離す断トツの数字だ。
現地24日の試合で大谷と投げ合うチャーリー・モートンは、現在ア・リーグ防御率No.1の右腕。今季は4戦3勝負けなしで、防御率は0.72。とてつもない成績を残している。
さらにベテランのジャスティン・バーランダーが防御率1.10でリーグ2位、ゲリット・コールも防御率1.29でリーグ4位と、投手成績トップ4のうち3人がアストロズ勢。これに2015年のサイ・ヤング賞左腕ダラス・カイケルを加えたローテーションは、メジャー屈指と言っても過言ではない。
「傑出度」に注目
さて、ここでひとつの数字を取り上げよう。注目したのは、アストロズのチーム防御率とリーグ平均防御率の“差”。これで出てくる数字は「傑出度」と呼ばれ、大きければ大きいほど平均と比べて優れた成績であることを現す。
今季のアストロズ投手陣が、ここまでに叩き出している「傑出度」は「1.86」。どれだけ凄いかと言うと、メジャーリーグが現在の30チーム制となった1998年以降、傑出度が「1.00」を超えたのは7度だけしかない。
【防御率傑出度が1.00以上だった例】
※左から傑出度・チーム名(年)・[メジャー平均-チーム防御率]
1.24 ドジャース(2003年) [4.40-3.16]
1.18 ブレーブス(1998年) [4.43-3.25]
1.15 ブレーブス(2002年) [4.28-3.13]
1.06 インディアンス(2017年) [4.36-3.30]
1.06 ブレーブス(1999年) [4.71-3.65]
1.04 カブス(2016年) [4.19-3.15]
1.02 カージナルス(2015年) [3.96-2.94]
―――――
▼ 現地4月23日終了時点
1.86 アストロズ(2018年) [4.07-2.21]
―――――
重要なのは“平均との差”。というのも、2015年のカージナルスはこの20年間で唯一防御率2点台を誇ったが、その年は“投高打低”だったため、傑出度では7位となっている。
傑出度1位は2003年のドジャースで、この年は野茂英雄(16勝13敗・防御率3.09)とケビン・ブラウン(14勝9敗・防御率2.39)の両右腕がWエースとして活躍。さらに石井一久(9勝7敗・防御率3.86)がローテーションの一端を担い、3試合のみの登板ではあったが木田優夫もメンバーにいた。そして、クローザーにはこの年サイ・ヤング賞に輝くエリク・ガニエが君臨。55セーブをマークし、防御率は1.20だった。
ただし、この年のドジャースは打線が全く機能せず、得点数はリーグワースト。最強と言える投手力を擁しながら、ポストシーズンを逃すという悔しいシーズンとなった。
また、1998年から2002年にかけて3度もランクインしているブレーブスにも触れないわけにはいかない。グレグ・マダックス、トム・グラビン、そしてジョン・スモルツの3本柱を中心にメジャーを席巻。“打高投低”だった時代の中で、長らく投手王国を築いたチームだった。
話を今季のアストロズに戻そう。まだ2018年シーズンは始まって1カ月弱。現時点では凄まじいチーム防御率を誇るアストロズ投手陣といえど、その数字を年間通してキープすることは難しいだろう。
しかし、他のチームであればエースでもおかしくないクラスの投手を複数揃える豪華な先発陣。“傑出度”では2003年のドジャースを超えるようなとてつもない数字を残す可能性も大いにある。今年のアストロズは投手陣にも注目だ。
文=八木遊(やぎ・ゆう)