レロン・リーの記録を抜いてトップに
日米で輝きを放った安打製造機が、日本球界の歴史に新たな記録を刻む――。
今季から7年ぶりに古巣のヤクルトに復帰した青木宣親が、あと8打数で通算4000打数の大台に到達。通算打率で日本の歴代1位にランクインされる。
日本実働8年で3900打数1284安打、打率.329という数字を残して海を渡った青木。メジャーでは6年間で774安打を積み重ね、昨年のアストロズ在籍時には日米通算2000安打も達成した36歳が登りつめるのは、まさに頂点だ。
記録対象となる4000打数以上の通算打率上位5人は、以下の通りとなっている。
【NPB歴代打率ランキング】
1位 .320(4934-1579) レロン・リー(1977~1987)
2位 .31918(6808-2173) 若松 勉(1971~1989)
3位 .31915(9666-3085) 張本 勲(1959~1981)
4位 .317(4451-1413) ブーマー・ウェルズ(1983~1992)
5位 .313(7500-2351) 川上哲治(1938~1958)
※()内は実働期間
5月1日の試合終了時点で、日本通算3992打数1307安打の打率.327という成績を残している青木。仮に4000打数に到達するまで無安打が続いたとしても、その数字は.327でレロン・リーの数字を上回ることになり、31年ぶりに首位の座が交代する。
現役選手である以上、打率は今後の成績次第で上下するため、順位が確定されるのはまだ先のことになるが、並み居る大打者を抑えてトップに立ったという事実は人々の記憶に残り、青木の活躍がどれほど素晴らしいものだったかを物語る。
今季は開幕から主に4番を務め、チーム状態によっては1番や3番、5番に座ることも。そんな中、4番で起用された4月4日の広島戦では、チームの本拠地初勝利を決定づける右翼線への適時二塁打を放ち、ヒーローインタビューでファンの大歓声を浴びた。
ここまでの打率は.250とまだまだ本調子とは言えないが、1番で出場した29日の巨人戦では3安打3得点と気を吐き、6日の巨人戦以来となる今季2度目の猛打賞を記録。対巨人は6試合で打率.348と好相性を発揮している。
出だしは好調だったものの、現在は借金7と苦しい状況が続いているヤクルト。5月からの反攻に向けて、やはり青木の力は欠かせない。
“ミスター・スワローズ”超えが目前
通算打率で日本人トップの成績を残したのが、ミスタースワローズ・若松勉である。
プロ19年間で6808打数2173安打を記録した“小さな大打者”は、6000打数以上であれば歴代No.1にあたる打率.31918をマーク。そして、青木にとっては恩師であり、かつて背負ったヤクルトの背番号「1」の大先輩でもある。
青木がプロ入りした当時、ヤクルトで指揮を執っていたのが若松だった。2005年に2年目の青木を一軍で使い続けると、若き安打製造機はイチロー以来となるシーズン200安打を記録し、最終的には202安打を放つ偉業を達成。最多安打に加え、打率.344で首位打者のタイトルも獲得した。
若松監督の下でヒットメーカーとしての道を切り拓いた青木は、そこから6年連続で打率3割を記録。2010年にはキャリアハイを上回るシーズン209安打を放ち、現時点でただ一人の「シーズン200安打複数回達成者」となっている。
ヤクルト復帰の入団会見で、「日本でやり残したことは、ヤクルトで優勝すること」と語った青木。偉大な恩師の記録を抜き、低迷するチームを自らのプレーで鼓舞していくことができるだろうか。
文=別府勉(べっぷ・つとむ)