1年目は二軍でも苦戦
日本球界にも増えてきたハーフの選手。オリックスのブレイク候補・宗佑磨や、楽天3年目のドラ1・オコエ瑠偉といった身体能力抜群の野手が代表格として注目を集めているが、投手にも注目株が現れた。
初のリーグ3連覇に向けて首位を快走する広島。そんなチームに突如登場したのが、身長196センチを誇る長身右腕・アドゥワ誠である。
プロ2年目の19歳。松山聖陵高時代には“伊予のダルビッシュ”の触れ込みでメディアに取り上げられたこともあり、3年時には夏の甲子園にも出場しているが、大舞台ではさほどインパクトを残すことなく敗退。その素材は高く評価されていたものの、ドラフトでも5位指名に留まっている。
入団後もすぐに頭角を現していたわけではなく、プロ1年目の昨季は一軍登板なし。それどころか二軍でも打ち込まれるシーンが目立ち、9試合の登板で0勝2敗、防御率は10.36と厳しい成績に終わった。
ぐんぐん成長中!
元から素材型としての評価だっただけに、本格化までは4~5年は覚悟が必要か。そんな見方も多かったなか、2年目の今季はオープン戦で5試合に登板。数字的には0勝1敗で防御率5.40と微妙な成績だったが、緒方孝市監督は開幕一軍メンバーに抜擢。2年目の19歳をリリーフの一角に組み込んだ。
すると、4月4日のヤクルト戦で待望の一軍デビュー。そこから12試合に登板し、ここまで15イニングを投げて許した失点はわずかに「1」。防御率は0.60と圧巻の成績を残している。
196センチ・83キロという恵まれた体格に加え、日本人離れした長い腕から放たれる140キロ台後半の速球は威力抜群。加えて変化球は110キロ前後のカーブにスライダー、チェンジアップと多彩に持っており、ゆくゆくは先発としての起用にも期待がかかる。
ただし、現在の防御率0.60にはラッキーな面も否めない。被安打はイニング数とほぼ同じ14本を許しており、与四死球も9つと制球力にも課題を残している。それでも、デビュー6試合時点で打者26人に対し1つだけだった奪三振が、その後の6試合では打者38人に対して7奪三振と増加。確実にアウトを奪う方法である三振が増えてきたというのは良い傾向だ。
苦労の1年目から一転、突如開花の兆しを見せている19歳右腕。短期間で成長を続ける鯉の将来のエース候補から目が離せない。
文=八木遊(やぎ・ゆう)