「この左腕をファイターズに捧げようと思う」
日本ハムの鉄腕・宮西尚生が開幕から好調を維持している。
今年でプロ11年目を迎えた左腕。昨オフはFA権を取得したこともあって去就に注目が集まるも、「この左腕をファイターズに捧げようと思う」と権利を行使せずに残留した。
プロ10年目の昨季は10年連続での50試合以上登板こそクリアしたものの、防御率3.32はキャリアで2番目に悪い数字。3点台を超えたのは、ルーキーイヤーの2008年以来で実に9年ぶりのことだった。
決して悪い数字ではないものの、長らく1点台から2点台の安定したはたらきを見せていただけに、勤続疲労や衰えなどを不安視する声も多く挙がった。しかし、決意の残留を経て迎えたプロ11年目の今季は完全復調した姿でチームを支えている。
5月15日の西武戦では、2点リードの8回に登板。まずは先頭の森友哉を伝家の宝刀・スライダーで完全に体勢を崩して二飛に打ち取ると、外崎修太には角度のあるクロスファイアを内角低めに投じて空振り三振。会心の投球だったのだろう、珍しくガッツポーズを披露した。
続く栗山巧には外角直球をうまく左前に運ばれ、メヒアに打席が回ったところでお役御免となったものの、リーグ最多となる今季10ホールド目をマークした。
見えてきた歴代No.1の数字
ここまで14試合に登板し、いまだ無失点で防御率は0.00。現在のところ登板8試合連続ホールドを継続中である。
思えば昨オフ、テレビ番組に出演した際に左腕はこんなことを語っていた。
「ただ50試合に投げるのではなく、満足のいく50試合にしたい」。
“50試合”とは、もちろんシーズン50試合登板のこと。上述した通り、宮西はルーキーイヤーから10年連続でシーズン50試合以上の登板を続けている。同様の記録として比較されてきたのは、宮西と同じく2008年から山口鉄也(巨人)が続けていた60試合登板。しかし、山口は昨季18試合の登板にとどまり、この記録は9年で途切れてしまった。
通算登板数では山口の642に対して宮西は588とまだ開きがあるが、通算ホールド数では歴代トップである山口(273ホールド)に残り「6」と迫る267となった。上半身のコンディション不良によって調整中の山口はいまだ一軍復帰のメドが立っておらず、宮西が頂点の座を奪うのは時間の問題だろう。
2015年シーズン終了後に左肘手術を受けたことはあるものの、これまで大きな故障をすることなく、体調と力を維持して登板し続けていることはもっと称賛されてしかるべき。こつこつとチームに多大な貢献をしてきた男が、ついに球界のトップに立つ。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)