コラム

斉藤和己と井川慶、両リーグに20勝投手が誕生した2003年【平成死亡遊戯】

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20勝を挙げて最多勝投手となった阪神の井川慶(左)とダイエーの斉藤和巳(右)

20勝投手のレアさ


 平成球界において、「20勝投手」はどれだけ凄いことなのだろうか?

 例えば、平成で250万枚以上売り上げたシングルCDは『TSUNAMI』『だんご3兄弟』『君がいるだけで/愛してる』『SAY YES』『Tomorrow never knows』『Oh! Yeah!/ラブ・ストーリーは突然に』『世界に一つだけの花』の計7枚。同じように平成30年間の日本球界で年間20勝達成者も計7名だ。かなり強引だが、レベル的には時代を代表するヒット曲と同等のレアさである。

 平成元年、89年の斎藤雅樹(巨人)と西本聖(中日)から始まり(斎藤は翌90年も20勝を挙げ平成唯一の2年連続20勝を達成している)、99年のゴールデンルーキー上原浩治(巨人)、03年の斉藤和巳(ダイエー)と井川慶(阪神)、08年の岩隈久志(楽天)、そして24連勝が話題になった13年の田中将大(楽天)まで。

 近年はだいたい5年に1度ペースで20勝達成投手が出ているので、今シーズンあたりそろそろ…と期待したくもなるが、25日現在でセ・リーグのハーラートップタイがメッセンジャー(阪神)と大瀬良大地(広島)の7勝、パ・リーグ1位も多和田真三郎(西武)の7勝。各チームまだ100試合近く残しているので充分チャンスはあるが、このハイペースな勝利数を年間通して持続する必要がある。

 現メジャーリーガーのダルビッシュ有や前田健太でさえもNPB時代に一度も超えられなかった20勝の壁。そう考えると、やはり偉大な記録である。今回は現時点で平成最後の両リーグ同シーズン20勝到達となった2003年の斉藤和巳と井川慶の軌跡を振り返ってみよう。


20勝到達を支えたダイハード打線


 斉藤は95年ドラフト1位指名でプロ入り。身長192cmの大型右腕は未来のエースを期待をされながら、右肩痛に苦しみ一時は野手転向も報じられるも、5年目の2000年にようやくプロ初勝利を記録。20勝前年の02年もわずか4勝だったが、03年に王監督から開幕投手に抜擢されたことで奮起する。

 プロ8年目、25歳での開花。先発で怒濤の16連勝という快記録を樹立し、19勝で迎えた10月7日の本拠地最終戦で1失点完投勝利を挙げ、パ・リーグ18年ぶりの20勝投手に。最終的に20勝3敗という堂々たる成績で最多勝・最優秀防御率・最高勝率・ベストナイン・沢村賞を総なめにした。まだ何の実績もなかった斎藤自身はこれが野球人生ラストチャンスと思って気力を振り絞り投げ続け、シーズンだけで体重が8キロも減ったという。

 ちなみにこの年のダイエーはあの“ダイハード打線”を擁し、とにかく点を取りまくってくれた。3番井口資仁、4番松中信彦、5番城島健司、6番バルデスの驚異の100打点カルテット。さらに柴原洋が打率.333、村松有人は打率.324、当時22歳の川崎宗則も3割手前の打率.294と打ちまくる。その上、パナマの怪人フリオ・ズレータも途中加入。唐突に「チョップ、チョップ、パナマウンガー!」なんて絶叫したくなる破壊力だ。

 なにせ規定打席に到達した3割打者が6人で史上最高のチーム打率.297、シーズン1461安打、276二塁打、2265塁打と記録ずくめの猛打爆発。チーム147盗塁もリーグトップと打って、走って、圧倒してパ・リーグを制した。やはり、年間20数試合の先発登板が基本の現代野球では、20勝達成には本人の実力だけでなく、自チームの打線の援護という要素が大きなウエイトを占める。


初の沢村賞両リーグ同時受賞


 同年の井川のケースも斉藤のチーム状況に近い。03年の星野阪神は序盤から首位独走して18年ぶりのセ界制覇。プロ6年目でまだ20代前半のサウスポーは開幕戦こそ敗れたが、4月30日から12連勝。優勝しても翌日の先発登板に備え、チームメイト達のビールかけをファンのようにテレビ観戦するマイペースな男は、10月10日の最終戦で6回3失点ながらも勝利投手となり、阪神では24年ぶりの20勝到達となった。

 こちらも最多勝や最優秀防御率といった主要投手タイトルを独占し、MVPに選出されている。猛虎打線はリーグトップのチーム打率.287、728得点と攻撃陣が好調な1年だったが、これだけ味方が打ってくれても、井川も斉藤と最終戦で大台到達のリアル。平成でわずか7名の難関、20勝投手への挑戦。最近の球界は通算2000安打達成者は急増しているが、200勝投手はすっかり貴重な存在となったのも頷ける。

 2003年の斉藤和巳と井川慶。秋の日本シリーズではこの両エースが第1戦で投げ合い、ともに7回まで持たずに降板。シリーズは第7戦までもつれ、それぞれ2試合ずつ先発したが両者に勝ち星はつかなかった。

 なおこの年、2人の20勝投手は、史上初の沢村賞両リーグ同時受賞をしている。


【2003年投手成績】
・斉藤和巳(ダイエー)
26試合(194回)20勝3敗
防御率2.83/160奪三振

・井川慶(阪神)
29試合(206回)20勝5敗
防御率2.80/179奪三振


文=中溝康隆(なかみぞ・やすたか)
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