コラム

交流戦男はさらなる高みへ

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ソフトバンクの柳田悠岐

白球つれづれ2018~第13回・柳田の打棒


 王者・ソフトバンクが苦しんでいる。

シーズン前の評論家による順位予想では、10人中8割近くが鷹軍団の優勝を見立てる絶対王者。それが開幕前から異変続きに見舞われる。

昨年までの激闘がたたったのか、故障者が続出。中でも監督の工藤公康が頭を抱えたのは「勝利の方程式」の崩壊だ。昨年のMVPであるD・サファテが股関節痛の手術、同じくセットアッパーとして大車輪の働きを演じた岩崎翔が右ひじの手術で共に長期の戦線離脱、岩崎の46ホールドとサファテの54セーブが吹き飛んでは安定した試合運びも望めない。

野手陣でも2000安打の内川聖一が大腿部の張りで先発メンバーから外れるなど、万全のチーム状態からは程遠い。それでも勝率5割の3位、首位の西武から4.5差はこのチームの底力のなせる技なのか?


セ界が震撼


 今年も5月29日からセパ交流戦が始まる。指揮官は「この交流戦で勢いをつけたい」と巻き返しを狙う。何せソフトバンクは交流戦にめっぽう強い。2005年から開始されたセパの激突の歴史で7度の優勝、昨年までは3連覇中である。

 特に「交流戦男」と言ってもいいのが主砲の柳田悠岐。3年前と昨年はMVPに輝いている。例年は夏場にかけて調子を上げてくる男が、今年は4月21日の日本ハム戦で史上65人目のサイクル安打を記録したあたりから、その打棒は手が付けられない。

その後も22試合連続安打をマークするなど絶好調だ。27日終了時点の「打率.374」はリーグトップ。「12本塁打」と「41打点」は同2位につけて三冠王も視野にとらえている。


超人も感嘆


 柳田の代名詞と言えばフルスイング。その凄みを見せつけたのが26日の楽天戦だった。エースの則本昴大が投じたインハイのカットボール、「グシャ」と鈍い音とともにはじき返された打球は明らかに詰まっているにもかかわらず中堅のフェンスを超す決勝の12号弾となった。非力な打者なら内野フライでもおかしくない。奪三振王の渾身の一球を打ち砕くのだからそのパワーは半端じゃない。

 野球界では昨年から「フライボール革命」という言葉が注目されている。鋭いゴロよりも打球の角度が35度から40度あたりで当たった方がヒットになる確率も高く、本塁打も量産できるということがメジャーの統計理論から弾き出された。

今春の日本の各球団キャンプでもティー打撃の練習にボールを上から吊るして下半分を打ち抜く光景が見られた。だが、メジャーのパワーがあれば高い飛球がオーバーフェンスできても、日本の場合は多くの選手が非力なため事情は異なる。

しかし、柳田の場合はこんな流行の前から「フライボール」を実践している。人並み外れた強靭な肉体は、2013年から自主トレを共にする阪神の糸井嘉男をして「あいつは化け物」と言わしめるパワーと飛距離を生む。自慢のフルスイングは、そのスピードゆえ、ぎりぎりまでボールを呼び込める。だからこそ本塁打も打率も上げていくことが可能なのだ。


真似できない打ち方


 先日のテレビ番組で元三冠王にして、ヤクルトや楽天で指揮を執った名伯楽の野村克也が柳田の打撃を分析していた。「誰も真似のできない打ち方」としたうえで「ものすごいアッパースイングに見えるけれど、実はミートポイントまでは最短距離のレベルスイングが出来ている。そこからひねりあげている。三冠王をとるんじゃないの?」と高評価を与えた。

 柳田と言えば、2015年に首位打者と3割30本塁打30盗塁の「トリプルスリー」を達成して一気にブレークした。今季はそれを上回る偉業も射程に捉える。

チームの台所は例年以上に苦しい。しかし、主砲のバットとともに交流戦で白星を積み上げて優勝戦線に躍り出るのが工藤ホークスの必勝パターンだ。最初に激突するのは巨人を3タテして波に乗り始めた阪神。相手に不足はない。昨年7本塁打をマークした交流戦が終わるころには、柳田の三冠ロードがはっきりと見えてくるはずだ。


文=荒川和夫(あらかわ・かずお)
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