世代の代表・大谷はまさかのDL入り
まさに衝撃的なニュースだった。エンゼルスの大谷翔平が、右ひじの内側側副靱帯(じんたい)の損傷で自身初の故障者リスト(DL)に入った。
大谷は今季5勝目をかけて臨んだ現地時間6月6日(日本時間7日)のロイヤルズ戦の試合後に右肘の違和感を訴え、「PRP注射」による緊急治療を受けた。3週間後の再検査のあと、今後の方針が決まることになっている。
今回の離脱により、投手としての前半戦復帰と球宴出場の可能性は絶望的となった。さらに、検査の結果次第では、復帰まで1年以上要するといわれる靱帯再建手術(トミー・ジョン手術)を受ける可能性もあるという。
メジャー1年目でベーブ・ルース以来の“二刀流”に挑戦してきた大谷は、7月で24歳を迎える。いま球界で成長著しい選手たちが集う“1994年生まれ”の代表格だ。そんな若武者に訪れた選手生命を脅かしかねない試練――。
大谷はここまで、投手として9試合に登板して4勝1敗、防御率3.10。打者としては43試合に出場して打率.289、6本塁打、20打点という好成績を残してきた。3・4月の月間新人MVPにも選出されると、5月30日のタイガース戦では今季最速となる101マイル(約163キロ)を2度計測するなど、投打で存在感を放ってきた。
大谷の活躍は日米のファンを魅了してきただけに、今回の離脱は残念でならない。しかし、いまはとにかく右ひじの治療に専念して、一日でも早い復帰を願うばかりだ。
大谷のライバル・藤浪は44日ぶりに一軍復帰
メジャーで“二刀流旋風”が巻き起こっているなか、日本では大谷と同じ94年生まれで、同世代のライバルとして度々比較されてきた阪神・藤浪晋太郎が一軍のマウンドに帰って来た。
藤浪は4月20日の巨人戦(甲子園)で5回を投げ、10三振を奪いながらも9安打6失点でKO。6四球と制球難が露呈して敗戦投手になっている。その後は二軍で調整を続けてきたが、ウエスタンでは4試合に登板して3勝0敗、防御率0.35と結果を残してきた。
すると、6月3日・西武との交流戦(メットライフ)で44日ぶりに一軍マウンドに復帰。6回途中7失点で降板したものの、真っ直ぐは最速156キロを計測。課題だった制球力も徐々に安定しつつある。翌日に出場選手登録を外れたが、次回登板に向けて最短10日の抹消期間を使って調整を続けている。
高卒1年目から2ケタ勝利をマークすると、そこから3年連続で2ケタ勝利を達成。4年目の2016年には自己最速の160キロもマークした。ストレートの威力は誰もが認めるところだが、近年は制球力の悪さから自ら試合を壊すケースが目立つようになった。
同級生の大谷とは、高校時代に甲子園の舞台でしのぎを削った。12年の選抜高校野球選手権では1回戦で対戦し、当時は藤浪の所属していた大阪桐蔭(大阪)が大谷の花巻東(岩手)に9-2で勝利を収めている。
海を渡ったライバルを横目に、藤浪は自身の「完全復活」を目指す――。阪神が上位進出を狙うカギは、藤浪の“復肩”にかかっているといっても過言ではない。
未来の侍ジャパン中心選手が集う世代
大谷と藤浪だけではない――。いま球界では「94年世代」が注目を集めている。その他の主な選手たちを紹介してみたい。
【主な94年世代の選手たちの今季の成績】
<投手>
▼ 柳 裕也(中日):1994/04/22
9試(47.1回) 2勝5敗 防5.70
▼ 浜口遥大(DeNA):1995/03/16
5試(24.1回) 0勝0敗 防4.07
▼ 中尾 輝(ヤクルト):1994/09/14
28試(29.2回) 5勝1敗 防2.73
<野手>
▼ 京田陽太(中日):1994/04/20
60試 率.242(252-61) 本1 点17
▼ 吉川尚輝(巨人):1995/02/08
58試 率.225(213-48) 本2 点13
▼ 西川龍馬(広島):1994/12/10
27試 率.273(55-15) 本1 点11
▼ 鈴木誠也(広島):1994/08/18
42試 率.300(130-39) 本6 点24
▼ 田中和基(楽天):1994/08/08
21試 率.292(65-19) 本4 点10
▼ 田村龍弘(ロッテ):1994/05/13
57試 率.238(172-41) 本0 点11
これからの球界を背負って立つ選手たちが揃う「94年世代」。投手陣を見てみると、DeNAの浜口遥大と中日の柳裕也はともに2016年のドラフト会議で1位指名を受けた2人だ。
浜口は昨季、球団の新人投手としては20年ぶりの2ケタ勝利となる10勝を挙げてブレイク。だが、今季はケガの影響で開幕に間に合わず、未だ白星を手にしていない。それでも、武器であるチェンジアップを駆使し、交流戦では奪三振数7位の17三振を奪っている。
柳は6月1日の日本ハム戦(札幌ドーム)で2回途中6失点とKOされて5敗目。現在は二軍で調整中だが、本拠地開幕戦を任せられるなど、その期待度は大きい。浜口とともにこの世代の中心投手としての期待がかかる。
94年世代の投手の中で今季、大きく飛躍しているのがヤクルトの中尾輝だ。ここまで中継ぎで5勝を挙げている左腕は「思い切って腕を振る」ことを心がけ、真っ直ぐとスライダーのコンビネーションで相手打者を手玉に取る。貴重な左のセットアッパーとして、ヤクルトを交流戦首位へと押し上げたまさに原動力といえる。
野手陣を見てみると、やはり広島・鈴木誠也の存在感は際立つ。今季は下半身のコンディショニング不良で開幕直後に離脱したものの、ここまで打率.300、6本塁打、24打点を挙げ、チームを引っ張っている。交流戦も好調で、打率.333と高いアベレージを挙げているのもさすがだ。
広島でこの世代の期待の若手といえば、西川龍馬も忘れてはならない。6月10日の楽天戦(マツダ)では、今季第1号となる決勝の3ランを右越えに放ち、ヒーローとなった。開幕直後は打率1割台と不振に陥り、5月2日に二軍降格も経験したが、同25日の一軍復帰後は調子を取り戻し、打率も.273まで上昇。今後の活躍が注目される選手の一人だ。
“94年世代の二遊間”といえば、中日の遊撃手・京田陽太、今季から巨人の二塁手に定着した吉川尚輝が挙げられる。
京田は昨季、球団の新人最多安打記録となる149安打を放って新人王にも輝いた。今季もここまでリーグ7位タイとなる61安打を記録している。巨人の吉川尚は安定した守備力が持ち味だが、5月13日の中日戦(東京ドーム)では松坂大輔からプロ1号となる2ランを放つなど、打撃でもその実力を発揮している。
また、楽天の田中和基は大卒2年目のスイッチ・ヒッター。今季はここまで打率.292、4本塁打、10打点とパンチ力を見せつけ、得点圏打率も.412と勝負強さも発揮している。チームの中心選手としての予感が漂う有望株だ。
捕手でいえば、ロッテの田村龍弘も94年世代の一人。過去5年間でリーグトップの盗塁阻止率を2度記録(15年.429と17年.337)した強肩の持ち主で、16年にはベストナインにも輝いている。
昨年11月のアジアプロ野球チャンピオンシップでは侍ジャパンにも選出され、初戦の韓国戦でサヨナラ打をマーク。今季はここまで全試合にマスクを被るロッテの正捕手は、ジャパンの“正妻”候補でもある。
94年世代の中には、ルーキーイヤーから力を発揮できた選手もいれば、2年目からブレイクした選手もいる。そして、これからまだまだ伸びしろのある選手ばかりが揃っているのも魅力だ。
2020年の東京五輪もあと2年後に迫る中、今後この若いプレイヤーの中から何人の日本代表が選ばれ、侍ジャパンの中心選手として羽ばたいていくのか。シーズンを通しての今後の成長に期待したい。
文=別府勉(べっぷ・つとむ)