どら増田のオリ熱魂〜第31回・小田裕也〜
オリックス4年目の小田裕也が絶好調だ。交流戦に入ってからはスタメンでの起用も7試合(14日終了時点)と増えており、2015年に球団関係者が、「広島のキクマルのように、近未来の1、2番コンビとして売り出したい」と注目していた小田と西野真弘が、かつての輝きを取り戻しつつある。
ルーキーイヤーだった2015年は、キャンプから練習試合にかけて小田が猛アピールも、オープン戦から失速。そのときのことを「僕は何で打てているのだろうと思っていた。いつ打てなくなっても不思議ではなかった」と振り返っていたが、入れ替わるかのように西野が台頭し、開幕直後から一軍で活躍をすることになる。
寮では隣り部屋で「いつかウチらで1、2番を打ちたいね」などと話したこともあったという。そんな矢先、西野が有鈎骨骨折で離脱すると、ファームで状態を上げていた小田が一軍に昇格すると31試合に出場。打率.326(89-29)、2本塁打、6打点、6盗塁と活躍した。
当時、小田には西野が一軍選手のデータを、西野には小田がファームの状況や情報を提供していたという。年齢は小田が1つ上だが、まるで同級生のように仲が良い。そんな2人は今シーズン、5月31日、6月1日、12日の3回。1番センター小田、2番サード西野という形で、同時にスタメン出場。小田は「この何年間かを思うと長かったですね」と照れ笑いを浮かべた。
藤井コーチからのアドバイス
目下のところ、2015年に迫る結果を残し続けている小田だが、どのような変化があったのか。
「特にキャンプから変えた部分はなく、今年は代走のスペシャリストになってやろうって思っていたんですよ。ここ数年は代走での起用も多かったし、そこを極めようかなと。そんなとき、藤井(康雄)打撃コーチから、4スタンス理論の話をされまして。わかりやすく言うと、『お前は吉田正尚タイプだよ』って言われたんです。僕は小学校のときから、イチローさんタイプだと勝手に思っていたので、あの言葉は衝撃的でした」
“4スタンス理論”とは、「人間の身体には4つのタイプがあって、それぞれのタイプに適した身体の動かし方がある」というもの。小田はこれまで、重心が「つま先内側より」の“イチロータイプ”だと思っていたものが、実際は「かかと内側より」に重心をおく“吉田正尚タイプ”だったということ。
藤井打撃コーチの発言によって、自分に合った“型”を見つけることができた小田は、逆方向に強い打球を飛ばせるようになったり、受け身にならずしっかり振れば結果がついてくることを実感し始めている。
アドバイスを送った藤井打撃コーチにも話を聞くと、次のようなコメントが返ってきた。
「吉田正尚タイプだよと言ったのは、別にホームランバッターという意味ではなくて、正尚のいいところってナチュラルに動けるところなんです。小田もナチュラルに動けるのが持ち味なのに本人は気づいていなかった。それからは本人の力が出しやすい指導を心がけてますが、彼は真面目で休まないからね。今の数字は彼が本来持っているものに気づいて努力した結果ですよ」
「与えられた仕事に集中」
しかし、小田はけっして現状に満足などしていない。
「まだシーズンは始まったばかり。この状態がシーズンの最後まで続けば、いろいろと答えが出てくると思うんですけど、正直、スタメンも諦めていたし、今はやっとスタートラインに立った感じ。この何年間は僕もモヤモヤしてましたけど、もうモヤモヤは解消しました。ファンの皆さんはもっとモヤモヤしていたはずなので、スタメンでも代打でも考えは変えずに、1打席にしっかり集中して、それが代走でも与えられた仕事を集中してやることで、チームが勝つことに貢献します」
取材が終わると「今度ヘアバンドをグッズで出していただけるなら、小田裕也モデルにして欲しいですね」とひと言笑わせてから、汗が染み込んだ小田の代名詞でもあるヘアバンドとともにロッカールームに戻っていった。
小田はベンチスタートだった15日のDeNA戦でも、指揮官の代打起用に適時打という形で応えた。自分のやるべきことを理解し、それをやりきる――。宗佑磨が戻ってきたとき、意外なライバルが壁として立ちはだかることは間違いないだろう。
取材・文=どら増田