交流戦で打撃好調をキープ
ヤクルトが交流戦で球団史上初の最高勝率に輝いた。2012・14年の巨人以来、セ・リーグのチームでは2球団目となる。
勝率5割以上を達成したのも09年以来で実に9年ぶり。昨季の交流戦は5勝12敗1分の勝率.294と12球団で最下位だったチームが大躍進を遂げた。最大で11あった借金も現在は残り2にまで減らし、リーグ順位は阪神と並び3位タイとなっている。
投打ががっちりかみ合っての好調ぶりだ。先発の駒不足に変わりはないが、ベテランの石川雅規とブキャナン、ハフの助っ人コンビが軸となり、右肘の疲労骨折から復帰した小川泰弘の存在も大きい。リリーフ陣では中尾輝、近藤一樹、石山泰稚による“勝利の方程式”が確立してきた。
そして、自慢の打撃陣ではこの男の復調が大きい。6月6日から一軍に復帰した川端慎吾だ。復帰後10試合で複数安打は6度。そのうち2度は3安打猛打賞と快音を響かせている。6月の打率は現在、40打数16安打で打率.400とハイアベレージをキープしている。
復活の予感を感じさせた矢先の頭部死球…
川端は昨季の春季キャンプで椎間板ヘルニアを発症し、プロ入り後初めて一軍未出場に終わった。悔しさを晴らすべく臨んだ今季、復活の狼煙を上げたのは開幕戦だった。
3月30日のDeNA戦(横浜)で、今季“チーム1号”となる2ランを右翼席へ運んだ。16年5月26日の阪神戦(神宮)以来となる久々の一発は、開幕勝利をもたらす貴重な追加点となり、笑顔でチームメイトに迎えられた。
翌31日のDeNA戦(横浜)でも2安打を放ち、ファンも今季の川端の復活を予感していた――。そんな矢先の出来事だった。
今季の本拠地開幕戦となった4月3日の広島戦(神宮)。広島の今村猛から右側頭部に死球を受けて途中交代。検査結果に異状はなかったが、「脳震盪特例措置」により登録抹消となる。
特例措置のため10日間を待たずして再登録可能となった川端は、同11日の中日戦(ナゴヤドーム)で戦列復帰。しかし、その後は不振を極め、5月20日時点で打率は.173まで低迷した。
そして同21日、故障以外では10年5月19日以来8シーズンぶりとなる二軍落ちを経験。プロ13年目となるベテランは若手とともに汗を流し、ファームでは打率.355という数字を残して格の違いを見せつけると、上述の通り再び一軍に戻って来た。
15年はリーグ優勝に貢献…完全復活はこれから
巧みなバットコントロールを誇る川端。2015年には全143試合に出場して首位打者と最多安打のタイトルを獲得。“攻撃型2番”として、ヤクルトを14年ぶりのリーグ優勝へと導いた。巨人とのCSファイナルステージでも打率.467と好成績を残し、MVPに輝いている。
同年には三塁手としてベストナインとゴールデングラブ賞も受賞。オフには球団と4年の長期契約を結び、「生涯ヤクルト」を貫く姿勢を見せた。
ただ、その後はケガによる戦線離脱を経験。その間に西浦直亨や谷内亮太、藤井亮太ら複数の選手が三塁のポジションに台頭してきた。結局、どの選手も川端の地位を脅かすまでには至らなかったものの、今季はチームの方針もあり、本職の三塁だけでなく一塁を任せられることも多くなっている。
6月14日の西武戦(メットライフ)では「6番・一塁」でスタメン出場し、5打数3安打2打点と活躍。2点をリードされた8回にレフトへ同点の適時打を放つと、9回は雄平の決勝打のあとにセンターへの適時打を放って追加点を挙げた。
終盤の粘りで逆転勝ちしたヤクルトは、17年ぶりとなる6カード連続の勝ち越しを記録。主力の山田哲人が左肘の痛みでスタメンを外れた中、川端の存在感が光った試合だった。
22日からはリーグ戦が再開する。3年前に味わった優勝の喜びをもう一度味わうためにも、川端にはさらなる活躍が期待される。完全復活への道のりはまだ始まったばかりだ。
スタンドで鳴り響く川端のチャンステーマは「FUNKY MONKEY BABYS」の『悲しみなんて笑い飛ばせ』――。この曲が、歓喜の東京音頭へと切り替わるとき、燕党にとっての至福の時間となる。
文=別府勉(べっぷ・つとむ)