コラム

「良いところを挙げればキリがない」…平野佳寿はなぜ成功できたのか

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メジャー1年目から大車輪の活躍を見せている平野佳寿

指揮官も絶賛「良いところを挙げればキリがない」


 現地時間18日(日本時間19日)に行われたエンゼルス-ダイヤモンドバックスの一戦。ダイヤモンドバックスが6-3の3点リードで迎えた7回、平野佳寿は二死ながら一・三塁のピンチで主砲アルバート・プホルスと対峙。メジャー通算3035安打を誇るスラッガーを1ボールからの落ちる球で打ち取り、球団新人最長記録となる20試合連続無失点を達成した。

 チームを率いるトーリ・ロブロ監督は、「記録を塗り替えることは特別なこと」と平野を称賛する。

 「彼がやろうとしていることは、やるべきことをしっかりやるということだ。文化の違いがあるにも関わらず、この国の野球スタイルにしっかり対応している。それは彼にとってやや困難なことだったが、どんな場面でもマウンドに立ち、ゲームプラン通りにやってくれ、素晴らしい投球を続けている。ヨシの良いところを挙げればキリがないよ」


 この試合、平野は一死一塁という場面からの登場だった。打順がトップに返るところで火消しに向かうも、三塁への内野安打に珍しいボーク、さらに四球で満塁のピンチを招いた。

 ボークに関しては、「僕の中では全然やってしまった感じはなかったので、自分としては納得していない」と平野。コーナーギリギリに投げたボールもなかなかストライクのコールがもらえず、苦しい投球を強いられた。

 一死満塁となって、迎えるは3番のジャスティン・アップトン。2ボールからフルカウントまで持ち込むも、決めに行った外の速球を弾き返され、打球はセンター方向へ。誰もが頭を越えて、スタンドまで届くかどうか…と思ったであろう大飛球だったが、これをセンターのダイソンが快速飛ばして追いつき、フェンスを恐れぬジャンプでスーパーキャッチ。犠飛となって前の投手が残した三塁走者は還したものの、残ったピンチはプホルスを斬って1点止まり。リードを死守した。

 自ら出した走者ではなかったため、無失点記録は継続。試合後に記録について聞かれると、「きょうの試合前に記者さんから言われて初めて知ったんで、すんげえプレッシャーありました。言ってもらわんほうが良かったなと思って。全く知らなかったので」と本音がポロリ。

 好投の要因については「一番は、ずっと日本でやっていたことをしっかり…。試合前の準備から、試合が終わって次の日の準備とか、ケアとかも日本と同じようにやってきているので。毎日コンディションを崩さないようにやっていけているというのが一番かなと思います」と語った。


平野の成功の要因は…?


 そんな平野の成功ぶりについて、「彼は非常に良いフォークを投げている。加えてストライクゾーンの上に速球を投げることができる。その速球により彼のフォークはさらに生きている」と説明するのは、ダイヤモンドバックスのピッチング・ストラテジストを務めるダン・ヘイレン氏。現役時代はメジャーデビューした2003年から2015年まで先発投手として活躍し、うち11シーズンで2ケタ勝利を挙げた好投手だった。

 ヘイレンはさらに続ける。

 「彼の持ち球は速球とフォークの2種類だけ。でも、フォークを投げることのできる投手はそう多くない。とても特殊な球種なんだ。そして彼の速球。常時91~92マイル(約146~148キロ)のスピードが出ているが、彼のストライクゾーンの上に入ってくる速球は95~96マイル(約153~155キロ)に見える。そしてその速球により、彼のフォークはさらに効果を増すんだ」

 外から見えている以上に、打者にとって難しいボールを投げていることを力説。今後は相手も研究を重ね、よりマークが厳しくなることも予想されるが、ヘイレンは「彼の投球を続けていれば問題ない」と心配する様子は見せない。

 「彼は質の良い球を多く投げている。まだ3カ月だからとか、そういうことは関係ない。彼の投球であれば、これから先もずっと抑えていける」と太鼓判を押し、「彼は自信を持って投げることができている。世界最高レベルの打者を相手に、どんな厳しい状況でマウンドに上がろうとも気負いすることなく、しっかりと投げてアウトを取っている。アメリカにやって来て、メジャーという新たなリーグで、そして新たなチームに所属して野球をすることは、そう簡単なことじゃないのにね」と絶賛した。


 今や伝家の宝刀となって平野を支えているフォークだが、実はキャンプ中には制球に苦しむ場面も見られた。「やっぱり失敗から学ぶことは本当に大きな意味がある」と当時のことを振り返り、「フォークは自信をつけてきたボールでもある。どこでも、どの状況でも、どの場面でも投げられるように、今までずっとやってきた」と胸を張る。



“記録”はもちろん、“内容”にも注目


 現地5月6日から続く無失点投球。その間には5試合連続の無安打投球(5月6日~14日)も含まれている。

 同点の7回からマウンドに上がり、6試合ぶりに安打を打たれた現地5月15日のブリュワーズ戦。1安打も1奪三振で無失点に抑えた試合後、平野はこう語った。

 「今までは、たまたまヒットを打たれていなかっただけ。どちらかと言ったら、打たれてもランナーを背負って抑えるのが大事な仕事。ずっとヒットなしで抑えることの方が難しいですし。そういった意味では、ランナーを出してからしっかり抑えられたのは良かったと思います。これからもそういう場面での出番が来ると思うので、落ち着いてやっていきたい」


 無失点が続いているからと言って、これまで通りで良いという考えもない。まだまだ1試合1試合が模索の繰り返し。ピンチをしのいだ現地18日のエンゼルス戦後は「ストライクを取ってもらえなかったですけど、投げたいコースに投げられた。何球か良いボールも行ったので、ちょっとゾーンに入れてもいいのかなと。明日以降やっていきたいと思います」と新たな発見に声を弾ませた。

 連続している記録の行方はもちろん気になる。しかし、当の本人は至って冷静。目の前の1試合、1イニング、1アウトを取るべく全力投球を続けている。結果として残る“記録”だけでなく、その“内容”にも注目だ。


文=山脇明子(やまわき・あきこ)


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