コラム 2018.06.25. 19:00

“和製ジャッジ”大田泰示と日本ハムの浮上

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2番という打順で新境地を開拓し、チームの躍進を支えていた日本ハムの大田泰示

白球つれづれ2018~第17回・“未完の大器”が覚醒


 サッカーW杯の熱狂度には勝てないものの、日本のプロ野球も中盤に差しかかり興味深いペナントレース模様となってきた。

 セ・リーグは首位・広島の座は当面安泰ながら、2位の巨人から最下位の阪神までは2ゲーム差。(25日現在、以下同じ)毎日のように順位は入れ替わり、首脳陣には胃の痛くなるような日々が続く。

 一方のパ・リーグは開幕から首位を独走してきた西武の快進撃に陰りが見え出すと日本ハムやソフトバンクが肉薄。5位のロッテでも西武から6ゲーム差ならまだまだ希望が持てる。

 そんな「混パ」にあって壮大な実験?を試みているのが日本ハム。浮上の大きな原動力となっているのが超攻撃的な2番打者・大田泰示の存在だ。


和製ジャッジへの期待


 25日現在の打率は.279で13本塁打、43打点は立派な数字である。だが知将・栗山英樹の評価は意外なほど辛口だった。

 「まだ全然でしょう。彼の持つポテンシャルはこんなものじゃない」潜在能力の高さを認めているからこそ大田に求める数値は高くなる。さらに近い将来のクリーンアップ定着を尋ねると「ウチは遥輝(西川)と泰示が(実質上の)3、4番だから」と隠れた狙いも明かした。

 シュアな打撃と盗塁王の実績を持つ西川に、脚力もあり一発も期待できる大田の1、2番が誕生したのは4月24日のオリックス戦から。開幕直後は低調な打線に苦しみ下位を低迷していた日本ハムだが、このテコ入れから浮上のきっかけをつかんだ。栗山の大田に対する期待は、ずばり“和製ジャッジ"にある。

 これまでの2番打者と言えば、日本球界では長い間「つなぎ役」のイメージが定着してきた。現状でもセの首位・広島なら菊池涼介で、パの首位である西武も源田壮亮が2番を務める。

 いずれも俊足巧打ながら長打力を期待されているわけではない。だが、メジャーリーグでは近年、2番に最強打者を置く打順編成が主流。中でも昨年、50本以上のホームランを量産して話題を独占したヤンキースのA・ジャッジの存在がこの流れを決定づけた。

 初回、先頭打者が出塁すると判で押したように2番打者は送りバントか右方向への進塁打を要求されてきたが、そこに驚異のスラッガーが登場することで大量得点の可能性は広がる。塁上に俊足の走者がいればバッテリーは盗塁警戒でストレート系の配球も多くなる。長距離砲にとっては、おあつらえ向きの打席ともなるわけだ。


驚異の2番を示す数字


 「未完の大器」と言われながら古巣の巨人では芽が出ずに日本ハムに移籍したのは昨年のこと。急成長の裏側をかつて自身も巨人の選手として、その後は評論家として見つめてきた野手総合コーチの緒方耕一はこう分析する。

「巨人時代は、ここで打たなければ、と結果ばかりを気にすることが多かったと思う。今は打席でのゆとりも出てきて何でもかんでも打ちにいくのではなく狙い球も絞れるようになっている」

 脅威の2番を示す数字がある。24日の楽天戦。チームは接戦を落としてしまったが、初回から太田は先制の13号ソロアーチを放っている。ゲームの中で先制、同点、勝ち越し、逆転の一打は「殊勲打」と記録されるが太田の13本のホームランは4月20日のソフトバンク戦で放った第2号から12試合連続でこの殊勲安打を継続中なのだ。いかに“和製ジャッジ"が機能しているかがわかるだろう。

 チームには安打製造機の近藤健介や2年前の打点王・中田翔もいる。今シーズンは大谷翔平のメジャー挑戦や守護神・増井浩俊のオリックス移籍で戦力は大幅ダウン。期待の清宮幸太郎もまだ育成の段階では苦戦必至と見られたが、いざ戦いの幕が開けると優勝まで狙える絶好の位置にいる。

 「栗山マジック」の種を明かせば両リーグ最強の2番・大田泰示に突き当たる。苦節のプロ10年目。覚醒の打棒に注目だ。


文=荒川和夫(あらかわ・かずお)
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