コラム

新天地で輝くヤクルト・近藤「僕は雑魚キャラ」

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ヤクルトではセットアッパーとして活躍している近藤一樹 [写真=どら増田]

どら増田のオリ熱魂!特別編〜近藤一樹〜


 オリックス時代は“近ちゃん”の愛称でチームメイトやファンから親しまれていた近藤一樹がヤクルトへのトレードを通告されたのは、2016年7月のことだった。

 2008年に二桁勝利を挙げたものの、長らく右肘痛に悩まされ、一時は育成契約にまで降格した近藤は2015年に1411日ぶりの復活勝利を挙げる。この時、中島宏之をはじめとする野手のタイムリー談話に「近ちゃんのために」という言葉が付け加えられていたことを今でもよく覚えている。

 そして、別れは突然やってきた。2016年は春季キャンプを一軍でスタートし、先発ローテーションの“谷間”を担当。本人も「谷間のスペシャリスト」を自負していたが、6月11日に行われたDeNAとの交流戦で1回5失点とKOされる。

 それから1カ月が経った7月17日にヤクルト・八木亮祐とのトレードが発表。ファンに愛されていた選手だっただけに惜しむ声も多かったが、当時の加藤康幸編成部長は「(ヤクルトの)小川さん(当時シニアディレクターで現監督)からの強い要望もありましたし、彼が現役生活を長く続けるにはベストな選択だった」とトレードの経緯について語っていた。


新たな役割と喜び


 主に先発だったオリックス時代とは異なり、トレード当初は慣れない中継ぎ要員として起用されていたが、ヤクルトの投手陣に怪我人が続出したこともあり、昨年から試合を立て直す中継ぎとしてチームに貢献。今年は開幕から回跨ぎが可能なセットアッパーとして25日現在、リーグトップタイのホールド数を記録している。

「たまたま人がいないからここで投げているだけ(笑)。これぞヤクルトスタイル!僕はセットアッパーじゃないです。雑魚キャラです(笑)」

 今シーズンの活躍について、自嘲気味に笑いながら話していたが、オリックス時代に感じていた肘の痛みはまったくないという。

「なぜですかね。あんなに痛かったのに。オリックスの時は年に1度、投げられればという気持ちでやっていましたが、今は毎日投げるもんだともってやっている。ウェイトとかはやらずに畳一畳あればできるような新しいトレーニングにも取り組んでいますし、それをしっかりやれば怪我をしないと思います。自分がこれまで(体を)犠牲にしてきた功名じゃないですけど、いろんなケアの仕方を覚えた結果が今なのかなと思います」

 環境の変化が近藤の選手寿命を延ばしたのは確かなようだ。近藤自身も「両球団には感謝しかない」と話す。


すべてを糧にして


 また今シーズンは、一度は断念した「フォーク」に手応えを感じ、実戦で使ってみたところ「シーズン当初はキレキレで相手も知らない球なので有効だった」という。得意とする外角のスライダーとともに空振りが取れる変化球の球種を増やすことができ、その結果としてストレートのキレも戻ってきたようだ。

「中継ぎに入ったことで、チームに迷惑をかけるということがどういうことなのかよく分かりました。任された先発という立場を、もっと重く持たなきゃいけなかった。オリックス時代の岡田(彰布)監督の口癖じゃないけど、『完投しろよ』と言われたら『そらそうよ』って思います(笑)」

 先発時代に長いイニングを投げられなかったことを反省しつつ、短いイニングで勝負できているのは、どんなに打たれても起用し続けてくれた岡田元監督のお陰であると、かつての恩師への感謝の気持ちも忘れていない。近藤にとっては、今に至る全ての経験が、現在の活躍に繋がっているということなのだろう。

 取材を終えようとすると「ネコは元気ですか?」とオリックスの同級生・金子千尋の話をしてきた。金子が今シーズン初勝利を挙げた翌日、金子に近藤の話をすると「あいつも厳しいところで投げて抑えていて、刺激になります」と晴れやかな表情で話していた。離れていても2人の絆は強いものがある。


感謝の思いを胸に


 そして最後に、オリックスファンに伝えたいことがあると語り、次のように続けた。

「僕は今でも関西人だと思っています。家族も残してきた。僕はオリックス時代に2回、職質をされているんですけど、東京に来てからも職質されています(笑)。オリックスファンの方なら笑える話かな(笑)」

 近藤らしいユーモアを交えつつ、感謝の想いを口にした。

「僕がヤクルトに来て、オリックスファンでも僕を応援しに来てくださる方がたくさんいる。凄く励みになっています。今のオリックスは投手陣が若手の競争になっていて、羨ましいし刺激にもなっている。昨年オリックス戦で打たれたのは悔しかったですけど、引き続き応援してもらえたら嬉しいです」

 昨年はオリックス相手に打たれ、昨シーズンの初失点を喫したことを「悔しかった」と素直に口にした。そのリベンジを今年の交流戦ではしっかりと果たしている。このまま行けば監督推薦でのオールスター出場の可能性だってあるかもしれない。近藤一樹の新たな野球人生は、まだ始まったばかりだ。


取材・文=どら増田
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