プロ初先発・初勝利のマウンドへ
本日、7月11日をもって前半戦の全カードが終了するプロ野球。セ・リーグは首位の広島だけが貯金生活で、借金を背負う2位以下の5球団は混戦状態となっている。
球団史上初となる交流戦の最高勝率に輝いたヤクルトは、リーグ戦再開後の6月29日・阪神戦(神宮)に勝利して5連勝。4月17日以来の勝率5割に復帰したが、その後は7連敗。課題の一つとなっている先発投手陣が、早い段階で崩れるケースが続いた。
同30日の阪神戦(神宮)では、先発ローテの一角だったデーブ・ハフが4回9失点と乱調。二軍で再調整が決まった。代わって昇格した2年目の寺島成輝は7月1日に今季初先発を果たすも、2回6失点と力不足を露呈してしまった。
ヤクルトの先発陣で規定投球回に達しているのは開幕投手を務めたデービッド・ブキャナンのみで、ここまで6勝6敗、防御率3.33という成績を収めている。ベテランの石川雅規と右ひじの疲労骨折から復帰した小川泰弘がともに4勝3敗と勝ち星が先行し奮闘しているものの、やはり駒不足は否めない。
首位・広島を追撃するためには、やはり先発の枠に食い込んでくる新戦力の台頭が必要だが、その有望株がドラフト2位ルーキー・26歳の大下佑馬だ。
大下は6月23日の巨人戦(東京ドーム)で7回からマウンドに上がりプロ初登板。2回を無安打無失点、3奪三振と上々のデビューを飾った。さらに7月1日の阪神戦(神宮)では、4回を投げて無失点。5三振を奪う力投を見せ、日に日に首脳陣の評価を上げていく。
ここまでは中継ぎのみで計3試合に登板し、8イニングを投げて防御率1.13。被打率も.111と安定した投球を披露している。テンポの良いマウンドさばきが奏功し、奪三振率は12.38を誇る。
前半戦最後の試合となる7月11日の巨人戦(神宮)で、プロ初先発が決定した背番号15。巨人打線を相手に“プロ初勝利”となるか、注目のマウンドとなる。
ライバルを刺激に、先発ローテ定着へ
大下は崇徳高から亜大に進学。社会人の三菱重工広島で3年間を過ごしたのち、プロ入りを果たした。亜大時代の同期には、山崎康晃(DeNA)や薮田和樹(広島)がいる。彼ら2人は既にプロの舞台で実績を挙げているだけに、ライバルの活躍を刺激に先発ローテ定着を狙う。
コーナーに投げ分ける制球力の良さが最大の持ち味。社会人1年目から投げ始めたカーブに加え、スライダーやフォーク、ツーシームも武器とする。カーブの握りは、薮田が人差し指を立てて投げていたのをテレビで見て試したという。
多彩な変化球で勝負できる大下が、先発のマウンドでどんな投球を見せてくれるのか――。入団発表の会見で「チームから必要とされる選手になりたい」と語った右腕が、まさに“後半戦のキーマン”へと名乗りを上げるときがきた。
ヤクルト打線は、好調だった青木宣親が6月30日の阪神戦(神宮)で岩貞祐太から頭部死球を受けて抹消。精神的支柱を欠いたチームは、7月に入って苦しんでいる。夏場の苦しい時期を乗り越えるために、大下が先発投手陣の切り札となれるだろうか。
文=別府勉(べっぷ・つとむ)