コラム

中日・岩瀬仁紀、おっさんの熱い夏

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中日・岩瀬仁紀

白球つれづれ2018~第23回・中日のベテラン力


 日本一暑い街として、埼玉の熊谷か岐阜の多治見が連日のように話題を呼んでいる。そして今年、熊谷や多治見に負けず劣らず名前が出ているのが名古屋だ。どえりゃー暑さにも負けず、「投げるレジェンド」岩瀬仁紀が、また新たな金字塔を打ちたてた。

 今月3日にナゴヤドームで行われた巨人戦。試合は1点リードの中日が9回表に追いつかれ、なお二死一・三塁のピンチ。ここで監督・森繁和の切った勝負カードは岩瀬の救援だった。相手打者の大城卓三を代名詞のスライダーで左飛に料理、その裏、サヨナラ押し出しで岩瀬に今季初勝利が記録された。実に43歳8カ月の老兵が勝利となると、球団では山本昌以来。同僚の山井大介も40歳で今季は3勝をマークしており、同一球団で40歳以上の投手が二人とも勝ち星となるとセ・リーグでは初の珍記録?となる。

 985試合出場、58勝51敗、積み上げてきたセーブは405。文字通り、守護神として数々の日本記録を塗り替えてきた。

通常、一流のストッパーでも5年ほどで成績は下降線をたどる。連投による肩・肘の酷使。さらに他人の白星を守って当たり前、自分が打ち込まれれば勝ち投手の権利を台なしにしてチームにも敗戦をもたらしてしまう。肉体だけでなく、精神もタフでなければ務まらないポジションだ。そんな過酷な日々を20年近くにわたって続けてきたのだから怪物である。


欠かせぬ存在として


 アマチュア時代は強打者としても鳴らした。中日に入団した直後は先発を志願。だが、中継ぎとしての適性を見込まれ、安定した成績とともにストッパーが働き場所となる。うそか?まことか?岩瀬の中継ぎの適性を見抜いたのは、当時の投手コーチだった山田久志。アルコールには手をつけないことをみていて「これなら(深酒もないから)連投も出来るだろう」と配転を決めたという逸話が残る。

 落合博満が監督を務めていた2004年から2011年にかけて、中日は黄金期を迎える。5度のリーグ優勝に2007年には日本ハムを下して日本一、その中心には常に岩瀬がいた。年俸も4億を超えていたが、現在は7500万円。近年はさすがに球威の衰えは隠せず、2015年にはシーズンを通して一軍未登板の屈辱も味わった。2年前には自ら引退を申し出ており、この間の経緯を球団代表の西山和夫は次のように語る。

「チームとしては君の持つ技術と経験を若手に伝えていってもらいたい、まだ辞めてもらっては困ると説得した」

 チームは今季も抑え不在の窮状が続いている。シーズン当初は昨年34セーブの実績を残した田島慎二を抑え役に指名したものの、打ち込まれる試合が続き、現在はルーキーの鈴木博志に大役を任せるしかない。なるほど、まだまだ岩瀬の豊富な経験に頼らざるを得ないのが現実だ。


迫る前人未踏の大記録


 43歳の岩瀬に40歳の山井、今季はもう一人のおじさんも加わった。来月には38歳を迎える松坂大輔、かつての甲子園のレジェンドも華やかな栄光と真っ暗闇の挫折を味わって、ようやく復活の一歩を歩み出した。このベテランはチームに明るい話題をもたらしただけでなく、思わぬ余禄まで生み出した。何と松坂登板日後の次戦は必ず勝利を収めており、その間のチームは8連勝中。岩瀬もこの恩恵に預かったのかも知れない。

 「僕の勝利なんてどうでもいいんです、自分よりも先発に勝ちがついて欲しい」と語るかつての守護神には、どんな形であれチーム浮上の役に立てれば、という思いしかない。

 2位以下は依然として混戦の続くセのペナント争い。ギリギリの戦いが続く中で残り15試合となった1000試合登板、前人未到の大記録も目前だ。伝説の男が新たな伝説を作る出番は、まだまだある。


文=荒川和夫(あらかわ・かずお)
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