サイクル安打に12試合連続打点も!
まさに“夏男”と呼ぶにふさわしい活躍ぶりだ。ヤクルトの山田哲人が、2016年以来となる自身2年ぶり3度目のトリプルスリーへ向けて邁進している。
昨季、7月の打率は.247と不調だった山田。だが、今季は違う。「ファウルを打たずに一発で仕留められるなど、7月は特に調子が良かった」と語るように、7月は19試合で打率.425、7本塁打、18打点を挙げ、盗塁も8個をマーク。16年6月以来、球団最多6度目となる月間MVPにも輝いた。
2018年の夏は、男にとって記録ずくめの夏となっている――。
6月30日の阪神戦(神宮)では通算150号本塁打を達成。25歳11カ月での到達は球団史上最年少で、池山隆寛(現・楽天二軍監督)の26歳4カ月を抜くスピード記録となった。これがまさに、大暴れを予感させる“号砲”となる。
7月に突入すると、9日の巨人戦(静岡)で「(7月で)特に印象に残っている」という自身初のサイクル安打を達成。プロ野球史上66人目の快挙で、球団では2003年7月1日に稲葉篤紀が記録して以来15年ぶりだ。
さらに、後半になってもその勢いは止まらない。20日の中日戦(神宮)から12試合連続打点をマーク。86年にランディ・バース(阪神)が記録した日本記録「13試合」にはあと一歩及ばなかったが、日本人選手では最多の記録を更新した。
山田の活躍でチームもAクラスへ。昨季は球団ワーストの96敗を喫して最下位。「二度とああいう思いはしたくない」と、悔しさを糧にチームを牽引している。
プロ野球史上初の40本塁打・40盗塁へ
8月9日の試合終了時点で打率は.314。27本塁打で26盗塁と、自身3度目のトリプルスリー達成が現実味を帯びてきた山田。その向こう側にあるのが、プロ野球史上初となる同一シーズンでの「40本塁打・40盗塁」、いわゆる「40-40(フォーティー・フォーティー)」だ。
山田が最も「40-40」に近づいたのが2015年。この年は38本塁打(翌16年も同数)で34盗塁を記録し、チームを14年ぶりのリーグ制覇へと導いている。
過去、プロ野球界で「40-40」を達成した選手はいないが、最もこの記録に近づいたのが87年の秋山幸二(西武)で、43本塁打・38盗塁だった。ちなみに、メジャーでもわずか4人しか達成していない偉業だ。
海の向こうで達成した顔ぶれはというと、88年のホセ・カンセコ(42本塁打・40盗塁)、96年のバリー・ボンズ(42本塁打・40盗塁)、98年のアレックス・ロドリゲス(42本塁打・46盗塁)、06年のアルフォンソ・ソリアーノ(46本塁打・41盗塁)となる。
日本では誰もこじ開けたことのない記録の扉だが、いまの山田には無限の可能性がある。トリプルスリーのその先にあるのは“未知なる領域”だ。
しかし、山田はチームの主軸としてあくまでこう語る。「まだ試合数が残っているので、個人の記録よりもチームのことを考えてプレーしていきたい」
この姿勢こそが、夏場の活躍につながっているといっていい。そして、個人記録よりもチームの勝利を優先する背番号1の活躍は、8月に入っても続く。
9日のDeNA戦(神宮)では、2点ビハインドの3回二死一・二塁の場面で、ウィーランドからバックスクリーン右へ逆転の27号3ラン。本塁打数は、チームメイトのバレンティンと並んでトップタイだ。これで勢いに乗ったチームは11得点で快勝。連敗を3で止めた。
26歳のバットから放たれる打球は、夢へと続く――。チームを勝利へ導くため、山田の夏はまだまだ終わらない。
文=別府勉(べっぷ・つとむ)