コラム 2018.08.14. 11:30

今季の“精密機械”No.1は?プロ野球・与四球率ランキング

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昨季は驚異的な数字を残した阪神・秋山。今年は…?(C)KYODO NEWS IMAGES

ヤクルト・石川が7回パーフェクト投球


 ヤクルトの小さなベテラン左腕がその真骨頂を見せつけた。

 8月12日の中日戦に先発した石川雅規は、初回を10球で三者凡退に抑えると、そこからリズムに乗った投球を披露。多彩な変化球を低めに集め、凡打の山を築くという“らしさ”全開の投球で、なんと7回までパーフェクトピッチング。

 8回に先頭のビシエドに二塁打を浴び、続くアルモンテにも安打を許したところでマウンドを降りることとなったが、この日の石川の成績は7回を投げて81球、与四球0という一切の無駄がない見事なもの。球界きってのコントロールピッチャーらしい姿を見せてくれた。

 残念ながら援護に恵まれず、石川に勝ちはつかなかったものの、9回の逆転劇を呼び込んだのは間違いなく石川の好投であったろう。「球数が少なくテンポがいい投球が攻撃の流れを引き寄せる」とは、球界における常套句のひとつ。とはいえ、そういう投球をすることはプロであっても決して簡単なことではない。

 その足かせとなるのが、コントロールの乱れである。いくつも四球を出してしまえば、当然ながら球数は増え、投球も慎重にならざるを得ず、テンポも悪くなる。結果、守備時間が長くなり、攻撃のいい流れも生まれないという悪循環にハマることとなる。

 実は、今季の石川はそれほど制球が安定しているわけではない。シーズン序盤にコントロールを乱すケースが多かったことで、ここまでの与四球率は3.25である。通算で1.77という見事な与四球率を誇る石川にすれば、かなり悪い数字だ。

 では、“いつもの石川”のようにコントロールが安定している投手というと誰なのか。下記は、規定投球回到達者のなかでの与四球率ベスト5、そしてワースト5の投手である。

▼ 与四球率ベスト5
1位 1.22 秋山拓巳(阪神/95.2回・13四球)
2位 1.52 岸 孝之(楽天/130.0回・22四球)
3位 1.53 菅野智之(巨人/135.0回・23四球)
4位 1.57 アルバース(オリックス/108.2回・19四球)
5位 1.79 石川 歩(ロッテ/115.2回・23四球)

▼ 与四球率ワースト5
1位 4.47 ガルシア(中日/116.2回・58四球)
2位 4.13 バンデンハーク(ソフトバンク/100.1回・46四球)
3位 3.97 岡田明丈(広島/106.2回・47四球)
4位 3.94 小笠原慎之介(中日/107.1回・47四球)
5位 3.20 山口 俊(巨人/132.0回・47四球)

※規定投球回到達者
※数字は8月13日までの時点


阪神・秋山は2年連続トップなるか


 12球団No.1の制球力を誇っているのが、阪神の秋山拓巳。昨季は12勝を挙げて大きな飛躍を果たし、その卓越した制球力が野球ファンに広く知られることとなった。

 昨季の秋山は、159回1/3を投げて与四球はわずかに16。与四球率0.90という驚異的な数字を残している。当然、12球団ナンバーワンの成績だ。それを思えば、今季の秋山は不調と言ってもいいのかもしれない。

 そして、“制球力自慢の石川”といえば、ロッテ・石川歩の精度の高さも相変わらずである。ロッテ・石川の通算与四球率は、ヤクルト・石川の1.78をしのぐ1.75だ。

 開幕から安定感抜群の投球でチームを支えていたものの、7月24日のソフトバンク戦で右肩の違和感により2回2失点で緊急降板すると、続く7月31日の日本ハム戦では1回を投げ切れず10失点を喫し、現在は登録抹消中。しかも、二軍でランニング中に右足を捻挫するという「泣きっ面に蜂」状態。少しでも早い復帰が待たれる。


 一方、ワーストランキングで目を引くのがソフトバンクのリック・バンデンハークだ。本来のバンデンハークは高い奪三振力とともに制球力を併せ持つことで知られている。ソフトバンクに加入した2015年から昨季までの3シーズンを合わせた与四球率を見ても2.31と優秀なものである。

 それが、今季は4.13と大きく悪化。ここまで7勝を挙げながらも7敗を喫して貯金ができておらず、防御率も4.84とらしくない数字となっている要因は、コントロールの乱れにあるのかもしれない。

 卓越した制球力は、豪速球とはまた違ったプロならではの魅力である。そして、一般的に技巧派投手のほうが速球派投手より選手生命は長いもの。38歳になったヤクルト・石川にも、この日の中日戦のように元気な姿をまだまだ見せ続けてほしいものだ。


文=清家茂樹(せいけ・しげき)


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