「巨人軍の4番」に定着した岡本
プロ野球の2018年シーズンも終盤戦に突入。今年も多くの若手選手がブレイクを果たしたが、中でも代表格と言えるのが巨人の岡本和真だろう。
将来の主砲候補としてドラフト1位で入団も、過去3年は思うような結果を残せず。しかし、“勝負の年”として挑んだ4年目の今季はオープン戦から打点王に輝くなど結果を残して開幕スタメンの座を掴むと、3年間で通算1本塁打だった男が3・4月だけで5本のアーチを描き、打率も余裕の3割超え。そのまま好調を維持し、6月には第89代巨人軍4番打者の座まで登りつめた。
6月2日の4番初出場から休むことなく4番スタメンを継続している22歳は、8月4日の中日戦で今季の第20号をマーク。球団の22歳以下の選手によるシーズン20本塁打超えは、長嶋茂雄、王貞治、松井秀喜、坂本勇人に次ぐ史上5人目の快挙。球団史にその名を刻む名選手たちと肩を並べたのだ。
早くからチームの主力として活躍していなければ達成できないこの記録。巨人に限らずとも、この記録をクリアできた選手は後に球団を背負うスターに成長する例が多い。というわけで今回は「22歳以下でシーズン20本塁打以上」という記録にフォーカスを当て、1990年以降にこの記録を達成した選手たちを振り返ってみたい。
かつての日本人野手メジャーリーガーたちも…
まずは1990年代の選手たちから。なお、登録名や所属球団は達成当時のもの。
▼ 堀 幸一(ロッテ/22歳)
1991年:110試 率.284(380-108) 本20 点69
☆主な表彰:ベストナイン(2005年)
▼ 新庄剛志(阪神/21歳)
1993年:102試 率.257(408-105) 本23 点62
☆主な表彰:ベストナイン(3回)、ゴールデングラブ賞(10回)
▼ 前田智徳(広島/22歳)
1993年:131試 率.317(499-158) 本27 点70
☆主な表彰:ベストナイン(4回)、ゴールデングラブ賞(4回)、カムバック賞
▼ 松井秀喜(巨人/20歳)
1994年:130試 率.294(503-148) 本20 点66
☆主なタイトル:首位打者、本塁打王(3回)、打点王(3回)
▼イチロー(オリックス/21歳)
1995年:130試 率.342(524-179) 本25 点80
☆主なタイトル:首位打者(7回)、打点王、盗塁王、最多安打(5回)、最高出塁率(5回)
※日本でのもの
▼ 中村紀洋(近鉄/22歳)
1995年:129試 率.228(470-107) 本20 点64
☆主なタイトル:本塁打王、打点王(2回)、最高出塁率
ご覧のように、日本人メジャーリーガー4名を筆頭に豪華な顔ぶれ。メジャーに挑戦していない2人、前田や堀も看板選手として20年以上もチーム一筋で戦った功労者である。
どの選手も後にタイトルを獲得しているか、ベストナインやゴールデングラブ賞といった表彰を受けることになる名選手であるが、やはり別格と言えるのがイチローだ。21歳のシーズンに25本塁打を放ち、打率は.342。前年に続いての首位打者獲得だけでなく、打点王に盗塁王、最多安打、そして最高出塁率も同年に獲得。本塁打王以外の野手主要タイトルを総なめにした。
しばらく間が空いたものの…
続いて、2000年以降の達成者たちを見ていこう。
▼ 村田修一(横浜/22歳)
2003年:104試 率.224(330-74) 本25 点56
☆主なタイトル:本塁打王(2回)
▼ 中島裕之(西武/22歳)
2004年:133試 打率.287(502-144) 本27 点90
☆主なタイトル:最高出塁率(2回)、最多安打
▼ 中村剛也(西武/22歳)
2005年:80試 率.262(237-62) 本22 点57
☆主なタイトル:本塁打王(6回)、打点王(3回)
▼ 吉村裕基(横浜/22歳)
2006年:111試 率.311(396-123) 本26 点66
☆主なタイトル:クライマックスシリーズMVP
▼ T-岡田(オリックス/22歳)
☆2010年:129試 率.284(461-131) 本33 点96
主なタイトル:本塁打王
▼ 坂本勇人(巨人/21歳)
2010年:144試 率.281(609-171) 本31 点85
主なタイトル:首位打者、最多安打、最高出塁率
▼ 山田哲人(ヤクルト/22歳)
2014年:143試 率.324(596-193) 本29 点89
主なタイトル:本塁打王、最多安打、最高出塁率、盗塁王(2回)
▼ 大谷翔平(日本ハム/22歳)
2016年:104試 率.322(323-104) 本22 点67
主な表彰:MVP
▼ 鈴木誠也(広島/22歳)
2016年:129試 率.335(466-156) 本29 点95
☆主な表彰:ベストナイン(2回)、ゴールデングラブ賞(2回)
イチローと中村紀洋が達成した1995年以降、やや間隔が空いたこの記録。それでも、2003年に村田修一が大卒1年目でクリアすると、そこから4年続けて達成者が誕生。2000年以降では岡本が10人目の達成者となった。
2000年代に突入して最初にこの記録を達成した村田が巡り巡って巨人へと移り、その村田からレギュラーの座と背番号「25」を継承した岡本が同じ記録を達成。なんともドラマチックな展開である。
岡本和真は先輩たちに続き、チームを代表する選手・球界を代表する選手へと飛躍を遂げることができるか。和製大砲の今後がますます楽しみだ。
文=福嶌弘(ふくしま・ひろし)