ビシエドの8月月間打率は.482!
記録的猛暑となった2018年夏。暑さによる疲労の影響も例年以上に大きいのか、どのチームも投手が打ち込まれ、大量失点するケースが目立つ。12球団のうち、半数以上の7球団のチーム防御率が4点台という異常事態だ。
こんなときにありがたいのは、蓄積した疲労の影響が多くの選手に表れる夏場に強い、いわゆる「夏男」の存在だろう。ひとりで投げ抜き中継ぎ陣を休ませることができるタフな先発投手も頼もしいが、ここでは投手陣の失点以上の得点を稼ぎ出してくれる打者に注目してみたい。
7月から8月26日までの間の打撃主要3部門のランキングを見てみよう。この間の1球団当たりの平均試合数は40試合強。その規定打席数に近い125打席以上を記録したセ・リーグ31人、パ・リーグ34人の選手を対象とした。まずはセ・リーグから。
【2018年セ・リーグ夏男ランキング】
※7月〜8月26日の間に125打席以上
▼ 打率
1位:ビシエド(中 日) .434(159-69)
2位:鈴木誠也(広 島) .393(135-53)
3位:山田哲人(ヤクルト).385(148-57)
▼ 本塁打
1位:ソ ト(DeNA) 18本
2位:丸 佳浩(広 島) 17本
3位:バレンティン(ヤクルト)15本
▼ 打点
1位:バレンティン(ヤクルト)51打点
2位:丸 佳浩(広 島) 42打点
3位:ソ ト(DeNA) 41打点
3位:ビシエド(中 日) 41打点
「.434」というとんでもない打率をたたき出したのがビシエド(中日)。7月に月間打率.378、そして8月はここまで.482という5割に迫る驚異的な成績を残している。6月終了時点では打率.291にとどまっていたが、わずか2カ月ほどの間にシーズン打率を.346まで引き上げ、首位打者争いでも一気にトップに躍り出た。そのビシエドは8月26日の広島戦でも5打数4安打2本塁打4打点の大暴れ。この勢いはどこまで続くのか。
そして、パ・リーグも含めてトップの51打点を記録したのがバレンティンだ(ヤクルト)。特に8月はここまで12球団でただひとり30点台に乗せる31打点をマーク。シーズン打点でも、2位の浅村栄斗(西武)の99打点を大きく引き離す110打点で12球団トップである。110試合を消化しての110打点ということで、シーズン143試合に換算すればそのまま143打点。歴代シーズン打点記録ランキングでは7位となる数字だが、果たして。
希代のホームランアーティストが完全復活
続いて、パ・リーグを見てみよう。
【2018年パ・リーグ夏男ランキング】
※7月〜8月26日の間に125打席以上
▼ 打率
1位:柳田悠岐(ソフトバンク).363(113-41)
2位:井上晴哉(ロッテ) .343(143-49)
3位:松田宣浩(ソフトバンク).342(149-51)
▼ 本塁打
1位:中村剛也(西 武) 19本
2位:山川穂高(西 武) 17本
3位:柳田悠岐(ソフトバンク)12本
3位:松田宣浩(ソフトバンク)12本
▼ 打点
1位:浅村栄斗(西 武) 42打点
2位:中村剛也(西 武) 39打点
3位:中田 翔(日本ハム)33打点
西武ファンにとってなによりもうれしいのが中村剛也(西武)の復活だろう。昨季、規定打席に到達したシーズンとして初めて本塁打王を逃した中村は、今季は開幕直後から絶不調。6月終了時点での成績は、打率.125、3本塁打という、らしくないものであった。
ところが、7月以降はここまで打率.309と完全復調。昨季終盤に4番を奪われた後輩・山川穂高の17本塁打を上回る19本塁打を放ち、希代のホームランアーティストの面目躍如といったところだ。そして、山川らの成長により、復活した中村を下位打線に置けるところに今の西武の怖さがある。10年ぶりのリーグ制覇を狙うチームにとって、これほど心強い復活劇はない。
もうひとり、注目選手を挙げるなら、清宮幸太郎(日本ハム)だろう。打席数が満たないために今回のランキングには入っていないが、8月21日の一軍再昇格後の清宮は、6試合で打率.455(22打数10安打)、3本塁打8打点と打ちまくっている。ファームでも8月は打率.429(14打数6安打)、2本塁打6打点と好成績を残した清宮。シーズンを通して活躍してくれるに越したことはないが、夏男の素質を持っているのかもしれない。
間もなく9月に入るが、今年の残暑は厳しいものになりそうだ。爆発力を秘めた夏男たちが、シーズン終盤の鍵のひとつを握っている。
※数字は8月26日終了時点
文=清家茂樹(せいけ・しげき)