上昇気流に乗った燕
3連敗からの5連勝でヤクルトが再び上昇気流に乗っている。
昨季は45勝96敗2分で「51」もの借金を抱え、セ・リーグ最下位に終わった。今季の開幕前もヤクルトへの評価は決して高くはなかった。
実際に、今季もオールスター直後の7月19日時点では、借金7を抱えてリーグの最下位に沈んでいた。しかし暑い夏を迎え、チーム状態は上昇。現在では貯金を「2」まで伸ばし、気がつけばセ・リーグの2位につけている。予断を許さない状況が続いているものの、3位の巨人には3.5ゲーム、4位の阪神には5.5ゲームの差をつけ、3年ぶりのAクラス、そしてクライマックスシリーズ進出も見えてきた。
ヤクルト復活の最大の要因は「打線」にあると言えるだろう。チームの総失点数は、リーグワーストながら、青木宣親、坂口智隆、山田哲人、雄平の4人が打率3割をキープ。バレンティンと山田がすでに30本塁打を放っている。6番以降の下位打線に課題は残すものの、上位打線の爆発力は、西武や広島にも引けを取らない。
強力打線の大砲に期待
今季のヤクルト打線に目を向けると、自身3度目のトリプルスリーが濃厚となっている山田や、メジャーからの復帰した青木の活躍などが話題に上りがちだが、燕打線の4番を務めるバレンティンの打棒を忘れるわけにはいかない。
シーズン60本塁打の本塁打記録(2013年)を保持する大砲は、例年ケガで戦列を離れる期間があり、ケガなくフルシーズンを戦ったのは来日1年目の2011年しかない(144試合中140試合に出場)。しかし、今季は開幕から欠場したのは僅かに1試合だけだ。
バレンティンは、坂口、青木、山田と、いずれも4割を超える出塁率を誇る打者の後ろを打ち、多くの打点を稼いでいる。ここまで112試合の出場で記録した打点は、すでに「110」を数える。同部門2位のビシエド(中日)に「26打点差」をつけていており、その圧倒的な数字が際立つ。そして、現在のペースで打点を積み重ねていくと、シーズン139打点に達する計算になる。
バレンティンの得点圏打率は(規定打席到達28人中)リーグ15位の.305と好機で打ちまくっているわけではないが、今後も多くの得点機で打席に立つことは間違いない。そういう場面で快打、長打を連発できれば、プロ野球史上7人目の140打点超えはもちろん、史上3人目の150打点超えの期待も高まってくる。
3年ぶりのクライマックスシリーズ、そして日本シリーズ進出に向けて、強力燕打線の大砲から目が離せない。
▼ 歴代最高打点トップ10(シーズン記録)
161打点(130試合):小鶴 誠(松竹/1950)
153打点(134試合):ローズ (横浜/1999)
147打点(146試合):今岡 誠(阪神/2005)
146打点(140試合):藤村富美男(阪神/1950)
146打点(130試合):落合博満(ロッテ/1985)
144打点(144試合):ウッズ (中日/2006)
142打点(137試合):藤村富美男(阪神/1949)
136打点(134試合):ブランコ(DeNA/2013)
135打点(137試合):西沢道夫(中日/1950)
135打点(150試合):野村克也(南海/1963)
文=八木遊(やぎ・ゆう)