“救世主”マイコラス
ブルワーズらとナ・リーグのワイルドカードを争うカージナルス。チームはオールスター直前にマイク・マシーニー監督を解任。ベンチコーチを務めていたマイク・シルトを監督代行に置き、その手腕を買われたシルト代行監督がそのまま正式に監督の座に就いている。
そのカージナルスで開幕から奮闘を続けている選手の一人が、昨季まで3年間巨人でプレーしたマイルズ・マイコラスだ。7月には双子を授かり、メジャー復帰1年目でオールスターにも選出された(球宴直前に登板したためオールスターには登板せず)。
今季ここまで29試合に登板、180回2/3を投げ、15勝4敗、防御率2.99の堂々たる成績を残している。現地時間17日(日本時間18日8:35)のブレーブス戦での先発が予定されているが、この試合で白星を挙げれば、現在ナ・リーグ最多勝のマックス・シャーザーまで「1勝」差となり、最多勝の可能性も現実味を帯びてくる。
さらに現在の勝率(.789)は規定投球回数に到達しているナ・リーグ31投手のなかで堂々の1位。今季のカージナルスはマイコラスがいなければ、ワイルドカード争いは難しかったはず。まさにチームにとっては“救世主”といえる存在だ。
メジャー屈指の省エネ投球
マイコラスといえば、最速150キロを超えるストレートとスライダー、カーブなどを駆使する本格派のイメージがある。実際に昨季は、187個の三振を奪い、セ・リーグの奪三振王にも輝いた。しかしメジャー復帰1年目の今季は投球スタイルをメジャー仕様に微修正。今季の奪三振率(K/9)はナ・リーグで2番目に低い「6.28」である。
その代わり、日本で身につけた制球力と投球術が冴えわたっている。1試合あたりの与四球率(BB/9)はナ・リーグ断トツの「1.39」。さらに1イニング当たりの投球数(P/IP)は、ナ・リーグ2位の「15.01」だ。マイコラスは、ストライクを先行させ、投球数を少なく抑える省エネ投球で長いイニングを投げ、リリーフ陣の負担軽減にも一役買っている。
また、マウンドさばきという点でも巨人時代の経験が生きている。今季マイコラスが仕掛けられた盗塁企図数は僅かに3回だけ(そのうち1回を刺している)。これは規定投球回数に到達したナ・リーグの投手では最少である。
マイコラスは、巨人時代の2年目に右肩痛の影響で14試合の登板に終わるなど、日本時代も決して順風満帆ではなかった。そんな苦しい時間も経て、メジャー復帰元年は開幕から安定した投球を続けている。おそらくマイコラスが今季のレギュラーシーズンで登板する期間残り3試合になるだろう。チームがポストシーズンに進出するためにはどの試合も負けられない登板となりそうだ。
文=八木遊(やぎ・ゆう)