若き力が続々と台頭
昨季は球団ワーストの96敗を喫する大惨敗…。屈辱を味わったヤクルトが、まさに“実りの秋”を迎えようとしている。
今季はここまで129試合を消化し、65勝62敗2分の2位。3位の巨人との差を「5.5」と拡げ、熾烈なクライマックスシリーズ出場争いから抜け出した感すらある。
貯金生活を送るチーム状況はもちろんのこと、ここに来て若手が躍動している点も見逃せない。主力の高齢化を指摘する声もあったなか、奮闘するベテラン勢に負けじとフレッシュな力が台頭してきた。
たとえば、内野のバックアップとして定着しつつあるドラフト6位ルーキーの宮本丈。8月半ばに2度目の昇格を果たすと、初スタメンとなった8月18日の阪神戦ではマルチ安打を記録。9月12日の巨人戦でも、1点ビハインドの9回に代打で登場し、きっちりと同点の犠飛。スタメンに代打、代走、守備固めと様々な役割でチームに貢献している。
“山田2世”の異名でブレイクが期待される3年目の広岡大志も忘れてはならない。自身のプレイヤーズデーだった8月26日に一軍昇格を果たし、即スタメンで起用されると、第4打席で本塁打をマーク。3度の凡退を帳消しにする“一発回答”で強烈なインパクトを残した。現在は再び二軍に降格しているものの、短期決戦の切り札として名前が呼ばれる可能性も大いにある。
さらにもう一人、鮮烈なデビューを飾ったのがドラ1ルーキーの村上宗隆だ。昇格即スタメンでプロ初出場となった9月16日の広島戦で、初回に訪れた初の守備機会でまさかの失策。4失点のキッカケを作ってしまったものの、持ち味であるバットで挽回。第1打席で広島・岡田明丈からプロ初打席・初本塁打を放ってみせた。
日本の主砲・筒香嘉智(DeNA)を彷彿とさせるような打席での雰囲気は、高卒ルーキーとは思えない堂々としたもの。清宮幸太郎(日本ハム)や安田尚憲(ロッテ)といった同世代の大砲候補たちからは遅れを取ったものの、第一印象で大きな爪痕を残した。
原に星、梅野ら投手陣も
投手陣を見ても、プロ3年目の原樹理がここに来て覚醒。開幕直後は結果を残せず、交流戦の時期から中継ぎに配置転換されていたものの、後半戦から先発に戻ると8月は3勝負けなしの活躍。9月も1勝1敗ながら防御率は0.60と抜群の安定感を見せている。
大卒2年目の星知弥も9月13日の今季初先発で初勝利。2位争いという観点からも重要だった巨人戦で、6回1失点の力投を見せて見事に期待に応えた。昨秋の肘の疲労骨折を乗り越え、復活への大きな一歩を踏み出した右腕。ローテーションの兼ね合いもあって勝利の翌日に登録抹消となったが、この後に控える大一番に向けて頼もしい存在が現れた。
リリーフ陣では、高卒2年目の梅野雄吾がアピール中。今季序盤は打ち込まれるシーンも目立ったが、悔しい経験を糧に夏場に再昇格を果たすと、威力抜群の真っ直ぐと度胸の良さで勝ちゲームの7回を任されるまでになった。近藤一樹と石山泰稚の方程式は開幕からフル稼働を続けているだけに、梅野にかかる期待は大きい。
また、ドラフト2位ルーキーの大下佑馬や2年目左腕・中尾輝もブルペンに欠かせない存在になりつつある。彼らが切磋琢磨していくことで、チームはさらに加速していくことだろう。
帰ってきた青木宣親や坂口智隆といったベテラン勢の奮闘が注目を集めた今季のヤクルトであるが、ここに来て投打とも若い選手たちが台頭。一軍の舞台でもその実力を発揮しつつある。
CS出場争い、そしてその先のポストシーズンと緊張感のある試合が続くなか、若い選手たちが経験を積んでいくことは今後の野球人生において大きな財産となることだろう。
チームの浮上はもちろんのこと、若手選手の成長という「大きな実り」も…。充実の秋を迎えようとしているヤクルトから目が離せない。