どら増田のオリ熱魂!~第34回・増井浩俊
「抑えでやってやると思ってきましたし、移籍したほうがセーブ王になれると思ってこっちに来た。間違ってなかったのかなと思います」
昨オフのFAで日本ハムからオリックスに入団した“守護神”増井浩俊は、9月下旬に話を聞いたとき、そう語っていた。
10月3日終了時点で現在35セーブ。この終盤に入ってソフトバンクの森唯斗が猛烈な追い上げを見せ、10月2日には単独トップに立つ36セーブ目を挙げた。残りの試合数は、オリックスの2試合に対して、ソフトバンクは6試合。目標にしてきた“セーブ王”のタイトル獲得は厳しい状況であることは間違いない。
ブルペンに欠かせぬ存在
オリックスへの移籍が決まった当初、新しい環境への適応に不安を感じていたが、そんなときに増井を食事に誘ったのが、中島宏之だった。「そういう場も移籍しなければなかったこと」と、当時のことを嬉しそうに振り返るが、今ではそんな増井が、近藤大亮、山岡泰輔、黒木優太、山本由伸といった投手陣を可愛がり、オフには自宅に招いて映画鑑賞会を開くこともあるという。
増井の前を投げるセットアッパーの“神童”山本由伸は、「お手本のような人。毎日変わらないし、疲れも見せない。みんなからの信頼も凄い。僕は勝っている試合を投げるときは、このまま増井さんに繋げば勝てると思って投げてます」と評し、絶大な信頼を寄せている。
今シーズンはチーム最多となる62試合に登板しているが、「日本ハム時代には72試合(12年)や66試合(13年)を経験しています。例年(50数試合)よりちょっと多いぐらいじゃないですかね」と問題ないことを強調。春先は「移籍1年目の開幕ということもあって力んでしまった」結果、打ち込まれた試合もあったが、5月は防御率0.00、6月も0.66と無双ぶりを発揮した。
その後、夏場以降は好不調の波もあり、「連敗していたときに止められなかったときは申し訳ない気持ちになりました。僕が投げる試合で止めないと大型連敗になってしまう」と、“守護神”としての責任についても言及。しかし、“打高投低”の今季にあって、防御率2.39は堂々たる数字だ。
悲願のタイトルへ
増井の生命線は150キロのキレのあるストレートと精度の高いフォークだが、本人は「ストレートあってのフォークだったり、ピッチングだと思っている。ストレートはキャッチボールから意識してます」と語り、ストレートの重要性を強調する。
また、ブルペンでも「投げてみて、頭の中でスピードが緩いなと思ったら、握りを浅くしてスピードを速くしたり、シュート気味に落ちてるなと思ったら、わざとスライド気味にリリースしてみたり、自分の中でイメージするんです。フォークはその時々で、軌道を見て悪かったらその逆をやったりして修正します」と調整法に関しても日々試行錯誤を続けている。
これまで様々な経験を積み、引き出しを増やしてきた増井ではあるが、日本ハム時代にセーブ王のタイトルを獲ることはできなかった。FAで移籍してでも獲りたかったタイトルを1年目で獲得できるのか--。このタイトルは様々な状況に左右されるため、個人の頑張りだけで獲れるものでもないし、現状も厳しい。それでも、増井の選択が間違ってなかったことがシーズン終了後に証明されることを願っている。
取材・文=どら増田