コラム

阪神伝統のお家騒動は健在だった?

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阪神・金本知憲監督

白球つれづれ2018~第33回・金本監督辞任の裏に


 監督・高橋由伸の辞任で揺れた巨人がここへ来て絶好調だ。クライマックスシリーズのファーストステージでは、ヤクルトに連勝してファイナル進出を決めた。初戦は指揮官の意図した盗塁、ヒットエンドランの策が面白いように決まる。第2戦ではエースの菅野智之がCS史上初のノーヒットノーラン。シーズン中は苦虫を嚙み潰したような高橋の表情も吹っ切れた感じでスマイル全開。こんな戦いが出来るなら辞める必要もなかったのでは、というG党のボヤキが聞こえてきそうだ。

 その高橋巨人のあおりを受けて事実上の解任となったのが阪神・金本知憲である。11日にチーム低迷の責任を取り辞任することを明らかにした。しかし、この辞任劇の裏側に迫ると、とても発表通りには受け取れない。

 事態が大きく動き出したのはヤクルトに敗れて17年ぶりの最下位が決定した今月8日頃からだと言われる。「超変革」を旗印にスタートした金本タイガースの3年目。チームの若返りに舵を切りながら育成と勝利の両立を目指したが金本の構想は空回りの連続だった。

 2年前の新人王・高山俊や昨年は20ホーマーを記録した中谷将大らが伸び悩みファーム暮らし。期待の大砲・大山悠輔らが成績を残しだしたのも終盤戦に入ってから。春先までは不動の四番と計算した新助っ人のW・ロサリオに至っては全くの評判倒れで終わる。

 その結果、チーム打率.253はリーグ最下位、同本塁打85本は1位のDeNA(181本)に100本近い差をつけられては浮上もあり得ない。終わってみれば打線の中心は今年も糸井嘉男と福留孝介の両ベテランだったのでは首脳陣の指導力不足と責任を追及されても致し方ないだろう。


高橋監督辞任の余波


 黒星続きに本拠地・甲子園でも球団ワーストの39敗。球団だけでなく阪神電鉄本社にもファンの怒りや「金本辞めさせろ!」という抗議の電話が殺到した。それでも球団は今季から新たに3年契約を結んだ金本体制のバックアップを決めていた。すでに来季のコーチ陣の配置替えも決定して二軍監督の矢野燿大には金本の下で一軍ヘッド就任の要請までしている。

 それが急変したのは10日のDeNA戦終了後だ。球団社長の揚塩健治が監督と面談して辞任を迫ったとされる。同日には金本の良き理解者だったオーナーの坂井信也の辞任も発表された。こうした動きは球団本部長として業務にあたっていた谷本修らでさえ、寝耳に水だったというから本社筋からの大きな力が働いたと見るのが普通だろう。

 ここからは個人的な推測だが、金本の辞任表明の席で気になる発言があった。巨人・高橋監督辞任に話が及ぶと「結果が問われるのは巨人も阪神も一緒、巨人は3位でも辞めなければいけない。僕は最下位ですから」

 つい数日前まで来季の構想を語っていた指揮官と、それに向けた準備を進めていたフロント。だとすれば、この金本発言は本人ではなく本社サイドが責任を迫った発言ではなかったか?巨人・高橋辞任のあおりを食った可能性は否定できないだろう。


お家騒動ふたたび


 かつて、阪神の監督交代はお家騒動が付き物と言われた時代がある。本社の役員がAを監督に推薦すれば、他の幹部はBを推す。そこに新聞社やテレビ局の「応援団」まで現れてようやく決着にこぎつける。これではチームを長期スパンで見るビジョンも生まれるわけがない。

 わずか1週間足らずの騒動の末、後任には一軍ヘッドに内定していた矢野燿大の就任が決まった。金本とは東北福祉大の同期。一蓮托生と思っていただけに複雑な胸中もある。オーナーも現電鉄本社会長の藤原崇起が就任する。

 坂井-金本ラインで標榜してきた改革路線の何を継承し、何に修正を加えていくのか?事実上の解任と言われる本社の決断の裏には最下位の成績以上に甲子園での敗北とそれに伴う観客数の減少に危機感を抱いたからと指摘する者もいる。「超変革」第2章は本社の独断先行でない現場との風通しの良さが求められる。


文=荒川和夫(あらかわ・かずお)
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