コラム 2018.10.26. 20:45

遂に実現する鯉・鷹決戦!重ならなかった黄金時代

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監督会議を終え、握手を交わす広島・緒方監督(左)とソフトバンク・工藤監督=26日、マツダ

鬼門のポストシーズンを経て


 今年もクライマックスシリーズ(CS)からドラフト会議という流れが終わり、いよいよ27日から日本シリーズが幕を開ける。

 セ・リーグは、昨年CSという制度に泣かされた広島が、ファーストステージを勝ち進んできた3位の巨人を寄せつけず、3試合で日本シリーズ進出を決めた。一方のパ・リーグは、レギュラーシーズンの優勝チーム西武が、2位ソフトバンクに強力打線のお株を奪われ惨敗。実質1勝しかできずに涙を飲んだ。

 今回は西武がCSという制度に泣かされる結果となったが、両球団はパ・リーグがポストシーズン制を導入した2004年のプレーオフ第2ステージで相まみえ、レギュラーシーズンを2位で終えた西武が1位のダイエーホークスを3勝1敗で破り、(当時のルールで)リーグ優勝を果たした。

 ホークスにとって、これ以降のポストシーズンは鬼門となり、翌2005年はレギュラーシーズン3位のロッテに「下剋上」を許し、逆の立場で3位からのリーグ優勝を目論んだ2006年は日本ハムの軍門に降った。2007年からCSとなり、翌08年からリーグ優勝チームに1勝のアドバンテージが与えられるようになっても、CSの壁を破ることができず、2010年にはレギュラーシーズンを1位で通過しながら、再びロッテに3位からの「下剋上」を許した。

 それでも2011年にソフトバンクがレギュラーシーズン1位通過でリーグ優勝し、ようやくCSを勝ち抜いて日本シリーズに進出。それ以降、パ・リーグでは優勝チームが順当にCSを勝ち上がるようになり、ソフトバンクは2011年を含めて4度日本シリーズに駒を進め、その全てで日本一の栄冠を勝ち取っている。


叶わなかった昨年の対戦


 一方の広島と言えば、ポストシーズンが導入された2000年代半ばは、この制度でもなければ永遠に日本シリーズへの出場など叶わないのではないかという「暗黒時代」の真っただ中。前野村政権下の2013年になって、ようやく3位でCSへの切符を手にし、阪神相手のファーストステージを勝ち上がったが、ファイナルステージでは3連覇中の巨人に蹴散らされ、翌年も同じく3位でCSの舞台に立ったものの、この時は2位から日本シリーズ進出を決めることになる阪神に完敗。この結果を受けて野村謙二郎監督は退任し、現在の緒方政権にバトンタッチされる。

 昨シーズンは、ソフトバンク、広島ともリーグ優勝を果たし、このカードによる日本シリーズが実現するかと思われたが、広島がDeNAによもやの「下剋上」を許し、幻に終わってしまった。

 両チームの日本シリーズ出場回数は、今年を入れてソフトバンクが18回(前身球団を含む)、広島が8回である。この数字は各々12球団中3位と6位の記録。これまでに両者の対戦があってもよさそうなものだが、長いプロ野球の歴史において、両球団の「黄金時代」は重なることがなかった。


高度成長時代の強豪、南海ホークス


 両球団のうち、歴史が長いのはホークスの方である。前身の南海軍が大阪で産声を上げたのは戦前の1938年。戦時中、政府の方針により親会社・南海電鉄が関西急行鉄道と合併し、近畿日本鉄道となり、近畿日本軍を名乗ることに。戦後にはグレートリングというニックネームがつけられ、この敗戦後初のシーズンとなる1946年に鶴岡一人監督の下、初優勝を飾った。

 そして翌年、親会社の分離独立によって南海ホークスが誕生、1950年の2リーグ分裂の際にはパ・リーグに加入し、翌51年にリーグ制覇を成し遂げ、以降、1966年までの15シーズンで9回のリーグ優勝、日本シリーズ進出を成し遂げる。戦後の復興期から高度成長期、鶴岡・南海はパ・リーグの強豪であり続けた。

 しかし、1960年代後半からは、同じ関西の鉄道会社を親会社にもつ、阪急ブレーブスがパ・リーグの主役に踊り出る。この後、南海は前後期制の下、前期シーズンを制し、この阪急をプレーオフで破った1973年を最後に日本シリーズの舞台から遠ざかる。


安定成長期に台頭した赤ヘル軍団


 時代が高度成長から「安定成長」期に入った1970年代後半、セ・リーグで力をつけたのが広島だった。

 1965年に導入されたドラフト制度により、各球団の新戦力が均衡化されると、徹底的な猛練習によって戦力の底上げを図った広島が日本シリーズの常連となった。昭和50年代、広島はまさに黄金時代を迎え、昭和50年(1975年)の初優勝を皮切りに、昭和54年と同55年に連覇、昭和59年にも優勝と、古葉竹識監督の下、4度日本シリーズに出場、そのうち3度日本一に輝くなど「赤ヘル軍団」はV9巨人に代わるセ界の強豪となった。


バブル経済の到来と球界勢力図の激変


 しかし、広島の覇権はバブル経済とともに終焉を迎える。1980年代後半に訪れたバブル経済は、球界の勢力図を一変させた。

 日本のプロ野球の経済力はこの時期、メジャーリーグと肩を並べるようになり、現役バリバリのメジャーリーガーがジャパンマネーに吸い寄せられ、資金力のある球団の助っ人としてやってくるようになる。そして1993年に選手の移籍の自由を認めるフリーエージェント(FA)制度とドラフトの逆指名制度が導入されると、資金力のない市民球団・広島の時代は終焉を迎えた。

 1986年の古葉政権の優勝を最後に黄金期の4番・山本浩二が引退、翌年に山本と両輪となって黄金期を支えた衣笠祥雄もユニフォームを脱ぐと、1991年を最後に広島は日本シリーズの舞台からしばらく姿を消すことになる。

 広島がドラフトで好素材を指名できず、育て上げた選手をFAで金満球団に奪われるなか、バブルの追い風に乗って躍進を遂げたのが、ダイエーホークスだった。1988年オフ、南海から球団を買収した当時流通業界で飛ぶ鳥を落とす勢いだったダイエーは、チームを福岡へ移し、「球界の寝業師」根本陸夫の下で血の入れ替えを断行する。当時最新鋭の開閉式ドーム・福岡ドーム(現ヤフオクドーム)を建設するなど、すっかり弱小球団になってしまったホークスのイメージを完全に変えてしまった。

 そして総仕上げに「世界のホームラン王」王貞治を監督に招へい。その成果は、1999年の優勝、日本一となって結実した。以後、王・ダイエーは2000年、2003年に日本シリーズに出場、本社の業績悪化によりそのオフに身売りする2004年もレギュラーシーズンを1位で終えたが、前述したプレーオフで敗れ、日本シリーズ進出は逃している。

 ホークスがパ・リーグの覇者にのし上がったこの時代、広島は暗黒時代を迎え、両者が日本シリーズの舞台で相まみえることはなかった。


そして「西」の時代へ


 ホークスは、2005年にソフトバンクになって以降も、親会社の豊富な資金力を生かして好選手を獲得、人気実力とも球界を代表する球団に成長した。ポストシーズン導入直後は、この新ルールに泣かされたが、その「CSアレルギー」も払拭。今年は2位からの逆転で、2004年の借りを西武に返した。一方のカープも、ぶれない育成中心のチーム作りが結実し、再び黄金期を現出している。

 一見好対照にも見える両チームだが、共通しているのは地域密着の球団経営の結果、球団単体で黒字を出しているということ。「金満球団」と揶揄されることも多いソフトバンクも、今や二軍戦でも大入り満員、三軍でもチケット販売をしているという人気ぶりで、興行で出した黒字をさらなるチーム強化に使うというプロスポーツの理想形を確立している。

 かつて、プロ野球は「東」が中心だった。日本シリーズと言えば、首都圏の人気チーム同士の争いや、首都圏のチームに関西圏を中心とする地方のチームが挑むという構図が受け、「西」のチーム同士のカードはメディアからもそっぽを向かれたものだ。しかし、今回の「山陽新幹線シリーズ」は、チケットも早々にソールドアウト、メディアの注目度も高い。長い球界の歴史において、すれ違いを繰り返してきた両チームの黄金時代がついにシンクロした今回の日本シリーズ、注目の1週間が明日、幕を開ける。


文=阿佐智(あさ・さとし)

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