コラム 2018.10.29. 18:29

“真のエース”の証…?「沢村賞」を複数回受賞した投手たち

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巨人・菅野智之 (C) Kyodo News

沢村賞の選考基準をおさらい


 ペナントレースとクライマックスシリーズが終了し、残すところ日本シリーズのみとなった今年のプロ野球。シーズン終了とともに各個人タイトルも決定し、29日(月)には投手にとって最大の栄誉とも言えるタイトル「沢村栄治賞」(以下、沢村賞)の受賞者が発表され、巨人の菅野智之投手が2年連続2度目の受賞を果たした。

 戦前に活躍した伝説の速球投手・故沢村栄治氏の栄誉と功績を讃えるため、1947年に制定された同賞。先発投手が獲得できるタイトルの最高峰であり、昨年までに延べ69人がこの栄光のタイトルを勝ち取っている。

 最多勝など明確な数字で決まる他のタイトルとは異なり、沢村賞は選考委員会の審議により選出されるという少々特殊な制度をとっている。それだけに、基準が不明瞭なところもあるが、大まかな選考基準として以下の数字が設定されている。


【沢村賞・選考基準】
・登板数:25試合以上
・完投数:10試合以上
・勝利数:15勝以上
・勝 率:6割以上
・投球回:200投球回以上
・奪三振:150個以上
・防御率:2.50以下


 上記の数字のうち、先発完投型の投手が少なくなった昨今のプロ野球界では、1シーズンにおける「200イニング」と「10完投」はかなりハードルが高い。

 そのためか、必ずしもこの7項目すべてを満たす必要はなく、実際に過去10年に受賞した投手のうち、全項目を満たした投手はわずか2名のみ。一方で、多くの投手はイニングと完投数以外の5項目は満たしている。例外は2016年のジョンソンの4項目。そういった時代の中で、今季の菅野は7項目すべてをクリアしていた。


▼ 菅野智之・今季成績
・登板数:28試合
・完投数:10完投
・勝利数:15勝8敗   
・勝 率:.652
・投球回:202投球回
・奪三振:200奪三振
・防御率:2.14

 昨年達成できなかった「完投数(6試合)」と「イニング数(187.1回)」も条件をクリア。また、選考基準の対象外とはいえ、クライマックスシリーズで史上初となるノーヒットノーラン達成というのも、選考委員たちに強烈なインパクトを与えたことだろう。

 ちなみに2年連続の受賞は史上5人目で、全項目クリアは8人目。2度目の受賞は史上14人目の快挙となる。まさに、「エースのなかのエース」ともいうべき名選手に並ぶことになった。


プロ野球史にその名を刻んだ複数回獲得投手たち


 ちなみに、沢村賞が制定されてから71年。そのなかで複数回に渡って同賞を受賞したのは次の投手たちだ。


【沢村賞・複数回受賞者】

▼ 杉下 茂(中日)
1951~52年、54年に受賞
[通算] 215勝123敗 防御率2.23


▼ 別所毅彦(南海、巨人)
1947年、55年に受賞
[通算] 310勝178敗 防御率2.18
※1947年は「別所昭」名義


▼ 金田正一(国鉄、巨人)
1956~58年に受賞
[通算] 400勝298敗 防御率2.34


▼ 村山 実(阪神)
1959年、1965~66年に受賞
[通算] 222勝147敗 防御率2.09


▼ 堀内恒夫(巨人)
1966年、72年に受賞
[通算] 203勝139敗 防御率3.27


▼ 高橋一三(巨人、日本ハム)
1969年、73年に受賞
167勝132敗 防御率3.18


▼ 小林 繁(巨人、阪神)
1977年、79年に受賞
[通算] 139勝95敗 防御率3.18


▼ 北別府学(広島)
1982年、86年に受賞
[通算] 213勝141敗 防御率3.67


▼ 斎藤雅樹(巨人)
1989年、95~96年に受賞
[通算] 180勝96敗 防御率2.77


▼ 上原浩治(巨人、オリオールズ、レンジャーズ、レッドソックス、カブス)
1999年、2002年に受賞
[NPB通算] 112勝67敗 防御率3.02
[MLB通算] 64勝34敗 防御率2.66


▼ 斉藤和巳(ダイエー、ソフトバンク)
2003年、06年に受賞
[通算] 79勝23敗 防御率3.33


▼ 田中将大(楽天、ヤンキース)
2011年、13年に受賞
[NPB通算] 99勝35敗 防御率2.30
[MLB通算] 64勝34敗 防御率3.59


▼ 前田健太(広島、ドジャース)
2010年、2015年に受賞
[NPB通算] 97勝67敗 防御率2.66
[MLB通算] 37勝27敗 防御率3.80

※所属球団は獲得当時のもの
※現役選手は2018年シーズン終了時点の通算成績


 複数回に渡り同賞を獲得してきたのは、プロ野球史に名を刻んできた名投手ばかり。故障のため通算勝利が唯一100勝に届かなかった斉藤和巳も、通算勝率では.775と他を圧倒している。

 また、そのなかで杉下茂、金田正一、村山実、斎藤雅樹は沢村賞を3度獲得。いずれも150勝以上を挙げた大投手たちだ。

 このそうそうたるメンバーのなかに菅野が名を連ね、さらに来季には歴代最多タイとなる3度目の沢村賞獲得にも期待がかかる。少し気の早い話だが、来季の菅野がどんな圧巻のピッチングを見せるのか今から楽しみだ。


文=福嶌弘(ふくしま・ひろし)

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