コラム

青天井の選手年俸とFA制度

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広島・丸佳浩

白球つれづれ2018~第39回・加熱するFA戦線


 手元に2018年度の選手年俸ランキングがある。1位はソフトバンクの柳田悠岐で5億5000万円。17年オフに3年契約を結び、さらに「出来高」条項もある。今季は首位打者を獲得して日本シリーズ、日米野球でも大活躍とあれば、この額からさらに1億程度の上積みがあってもおかしくない。2位はE・メヒア(西武)、金子千尋(オリックス)、D・サファテ(ソフトバンク)の3人が並んで5億円。続く5位に巨人のエース・菅野智之が4億5000万円となる。

 ところが、今オフになってこのランキングも怪しいことが発覚した。オリックスの金子が球団から実に5億円の減額通告を受けたのだ。計算上は無給選手の誕生となるが、何のことは無い。2015年に4年契約でFA残留したときに5億と見られていた年俸が実は6億だったという。この時点ですでに柳田を超すナンバーワン長者だったのだ。

 話はいささか脱線するが、選手の年俸額はほとんどが球団担当記者の取材と話し合いによるもの。仮に大物選手Aが契約交渉に臨んだとき、終了を待って記者が取り囲む。ここで選手自らが「来季の年俸は〇億円です」と明かす場合とそうでない場合があるが、後者が大半だ。ここからが記者と選手の駆け引き。

記者「4億の大台に達しました?」

選手「いや、そこまでは」

記者「じゃあ、3億8000万台は?」

選手「まあ、そんなところですね」

 こうして、大枠のラインが出た後は、球団幹部や査定責任者にも取材をして実際の金額に近づける。したがって、金子のような1億円の誤差など滅多にないが、当時の記者連の取材不足と指摘するしかない。


お金の季節が到来


 なぜこんな話題を持ち出したかと言えば、今オフの過熱するFA戦線と無縁ではないからだ。すでに西武の浅村栄斗が4年25億円超(推定以下同じ)で楽天へ、炭谷銀仁朗が3年6億円で巨人入りを決めた。次なる最大の注目は広島3連覇の立役者である丸佳浩の去就。残留に向けて広島が4年17億の条件を提示したのに対して千葉出身の主砲を熱望するロッテは6年25億円超、24日に交渉に臨んだ巨人は5年総額30億円超をぶつけたと言われる。

 広島が年4億強に対して巨人は実に年6億以上を提示したわけだ。さらにもう一人のFA組であるオリックス・西勇輝にも阪神、ソフトバンク、DeNAがアタック。オリックス残留の可能性もあるが、ソフトバンクは4年15億超の好条件で口説いている。この両選手は近日中に結論を出すが、移籍するにしろ、残留するにしろ巨額のマネーゲームが展開されたことは疑いようがない。

 ちなみに浅村と丸の今季年俸は同額の2億1000万円。前述の年俸ランキングに当てはめると42位タイ。それが揃って6億超の道を選べばとんでもないジャンプアップとなる。

 FAは長年チームに貢献した選手に与えられる制度。それ自体は否定するものではないが、あまりに過熱していくとチーム内のバランスや球団経営そのものに影を落としはじめるのも事実だ。巨人OBでV9時代のエース・堀内恒夫が語った言葉が興味深い。

「FAで6億7億というなら菅野には8億くらい払わなければおかしい」

 2年連続沢村賞に輝き、非の打ちどころのない成績を残す絶対エース。それがもし移籍選手の後塵を拝すなら確かにチーム内で不協和音も生まれかねない。1993年からスタートしたFAで昨年までに権利を行使した選手は延べ86人。このうち移籍後にキャリアハイの成績を記録したのは7選手のみ、過去の例では9割がたが失敗というデータもある。

 このまま相場が高騰して年俸10億円時代が来るのか? ちなみにメジャーでは日本の比ではない巨額が動いているが、一方で一定の補強費を上回る球団には「贅沢税」が課せられ、ドラフトも戦力の均衡目的で下位球団から指名する「完全ウエーバー」が実施されている。日本球界も全体で考える時期に来ているのではないだろうか?


文=荒川和夫(あらかわ・かずお)
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