長距離打者へ変貌
11月30日、広島からFA宣言した丸佳浩が巨人移籍を表明した。
今季は開幕間もない4月28日の阪神戦で右太ももを痛め、はじめて故障による出場選手登録抹消を経験することとなった丸。しかし、約1カ月にわたって戦線離脱をしたにもかかわらず、今季の39本塁打・97打点・130四球はいずれも自己最高の記録であった。
出塁率.468は12球団トップであり、最高出塁率の個人タイトルのほか、2年連続でのシーズンMVP、3年連続でのベストナイン、6年連続のゴールデングラブ賞と、数々の栄冠を勝ち取った。まさに、プロ野球選手としてのピーク時にFA移籍を果たしたということになる。
とはいえ、5年総額30億円超ともいわれる提示金額は、巨人でいえばかつての松井秀喜(2002年/推定6億1000万円)や阿部慎之助(2014年/推定6億円)の年俸に匹敵するもの。“FA効果”による高騰だとしても、「さすがに高過ぎるのではないか」との声も聞かれる。
しかし、丸はすでに歴代トップクラスの打者に成長している。今季の出塁率.468は歴代8位の記録であり、その高い出塁率を支えたのが四球の多さだ。もともと四球を多く選べるタイプの丸だが、今季の130四球はこれまで自己最多だった100四球(2014年)を大きく更新。シーズン四球記録の歴代4位に食い込んだ。故障により打席数が減ったなかでの記録と考えると、その数は異常ともいえるレベルに達している。
それは、数年前まで多くの野球ファンが丸に対してイメージしていた「中距離打者」から、明らかな「長距離打者」に変貌したところに起因する。丸が記録した39本塁打と長打率.627は、昨季までの自己最高(23本塁打・長打率.505)をいずれもはるかに超えたもの。長打力が飛躍的に伸び、相手投手がストライクゾーンで勝負することを怖がる打者となったことで、四球が急増したのだろう。
「四球率」ではすでに歴代トップクラス
それは、「1四球を選ぶために必要な打席数」で表す“四球率”にも表れている。下記は、NPBが公表している通算四球数の上位40人における四球率ランキングトップ5である。
【通算四球率ランキング】
4.96 王 貞治
6.28 落合博満
6.52 松井秀喜
7.00 清原和博
7.08 呉 昌征
※松井秀喜の記録はNPBでのもの
丸の通算四球数は668であり、まだ通算四球数上位40人には入っていない。しかし、丸の通算四球率6.89は、上記ランキングでいえば清原和博を抜き去り4位に相当するものなのだ。広島出身の先輩でいえば、江藤智(7.44)や金本知憲(7.63)、山本浩二(8.06)らの記録も優にしのぐ。ちなみに、今季に限れば丸の四球率は4.35というとんでもない数字になっている。
もちろん、これから引退までの間には徐々に力が落ちていく。この数字をさらに伸ばす、あるいは維持することは簡単ではないだろう。それでも、「投手がストライクゾーンで勝負したくない」歴代級のスラッガーたちとともに、このランキングの上位に丸が名を連ねることは間違いない。
巨人の一員となった丸は、マツダスタジアムよりさらに本塁打が出やすいとされる東京ドームを来季から本拠地とする。果たして、どんな長距離打者ぶりを見せてくれるだろうか。
文=清家茂樹(せいけ・しげき