遊撃は根尾と京田の一騎打ち
球団史上ワーストとなる6年連続Bクラスに沈んでいる中日。長い低迷から脱却すべく、このオフには与田剛新監督が就任。新スローガン「昇竜復活」を掲げて再出発したチームは、大きく変わりそうな気配を感じさせている。
その最大の要因のひとつが、ドラフトの目玉として注目を集めたゴールデンルーキー・根尾昂の入団だろう。メインの遊撃に加えて外野、そして投手と“二刀流”どころか“三刀流”をハイレベルでこなす選手として注目を浴びた逸材は、周囲のプレッシャーに潰されることなく、今年の春・夏と全国制覇を達成。大阪桐蔭高を史上初となる2度目の春夏連覇に導いた。
ドラフト会議では4球団が競合した末、中日が当たりクジをゲット。注目の起用法については、本人は投手を封印して“遊撃一本”で勝負することを宣言。入団会見でも「ゴールデングラブ賞を獲りたい」と語るなど、レギュラー奪取へ意欲を見せた。背番号も宇野勝、山崎武司、森野将彦といった中日の一時代を支えた選手が背負った「7」に決まり、その期待は高まるばかりだ。
これに黙っていられないのが、中日のレギュラー遊撃手・京田陽太。2016年の新人王に対し、当初は与田新監督も「二塁を打診してみる」といった旨のコメントを出していたが、京田本人は「遊撃手として勝負」と根尾に宣戦布告。協力しつつの競争を強調しており、両者のポジション争いに大きな注目が集まる。
チーム全体に“根尾効果”
ポジション争いとなりそうなのは、遊撃だけではない。京田がまわることになりかけた二塁も激戦区だ。
今季は亀沢恭平に高橋周平、そして荒木雅博が主にスタメンで起用されていた。荒木が引退したことで、亀沢、高橋の争いとなるかと思われたが、ここにきてブレイクの気配を漂わせている選手がいる。来季が高卒2年目となる高松渡だ。
今シーズンの高松は一軍出場がなく、ファームでも3試合の出場のみだった。しかし、台湾で行われているアジア・ウインターリーグに派遣されると、ここまで(※12月13日時点)打率.303(33-10)と存在感を発揮している。
また、二遊間だけでなく、高校の先輩にあたる平田良介が「一緒にゴールデングラブ賞を獲りたい」とコメントすれば、選手会長を務める福田永将からも「野球に集中できる環境をつくる」とサポートを買って出る発言が。主力選手たちがこれだけ気にかけるというのは、根尾に対する期待はもちろんのこと、自身を奮い立たせる意味もあるだろう。チーム全体で意識が高まれば、自ずと順位にも良い影響が現れるはずだ。
とは言うものの、根尾もまだ高卒ルーキー。当然、過度な期待は禁物である。中日に限らず、高卒1年目の野手でレギュラーを獲得して新人王に輝いたのは、張本勲(東映/1959)や清原和博(西武/1986)など、過去に6人しかいない。直近では、チームの先輩にあたる立浪和義(1988)で、平成の間に高卒野手の新人王は誕生しなかった。
果たして、根尾は「昇竜復活」の使者となることができるか。2月1日のキャンプイン、そして2019年シーズン開幕が今から待ち遠しい。