史上最速・最年少の100セーブ
今季、2人の若手投手がそれぞれプロ野球史に残る記録を達成した。
まずは4月、DeNAの山崎康晃が日本人投手としては史上最速となる入団4年目での通算100セーブを達成。そして9月には、楽天の松井裕樹がプロ野球史上最年少の22歳10カ月で通算100セーブに到達した。
松井は高卒2年目の2015年に抑えに抜擢され、そこから5年間で通算101セーブをマーク。一方の山崎は、ルーキーイヤーの開幕時から抑えを任され、これまでの4年間ですでに133セーブを記録。今季はセーブ王にも輝いた。
高卒と大卒という違いはあるが、ともに若くしてクローザーに定着したことが、今季達成した最速・最年少記録につながったといえるだろう。2人には、通算セーブ数の日本記録に挑戦するチャンスがある。
日本最強のクローザーといえば…
通算セーブ数の日本記録といえば、今季限りで現役を退いた岩瀬仁紀の407セーブだ。
“鉄人ストッパー”の異名で他球団から恐れられた岩瀬は、大学から社会人を経て24歳でのプロ入り。当初は主にセットアッパーだったため、5年目の29歳までに記録したセーブ数はたったの「5」つだった。
クローザーに定着したのは、実は30歳目前でのこと。その後、最多セーブのタイトルを5度獲得するなど、ハイペースでセーブを積み重ねていった。
ちなみに、その岩瀬に次ぐセーブ数を誇るのが高津臣吾(286セーブ)で、同3位が佐々木主浩(252セーブ)。ともにメジャーでも活躍した日本屈指のクローザーだ。もし2人が日本にとどまっていれば、300セーブ超えはもちろん、岩瀬の記録にもかなり近づいていた可能性がある。
岩瀬と比べるとかなり若いうちからクローザーに定着し、すでに100セーブ以上を挙げている松井と山崎。年齢的には300セーブ、400セーブはもちろんのこと、岩瀬超え、さらには前人未到の500セーブへ…と期待は膨らんでいく。
ところが、セーブ記録を眺めていると、「200セーブ」のハードルが意外と高いことに気が付く。
わずか6人しかいない「200セーブ」
【通算セーブ数ランキング】 ※200セーブ以上
1位 407 岩瀬仁紀(通算1002試合)
2位 286 高津臣吾(通算598試合)
3位 252 佐々木主浩(通算439試合)
4位 234 デニス・サファテ(通算427試合) ☆現役
5位 228 小林雅英(通算463試合)
6位 225 藤川球児(通算710試合) ☆現役
通算100セーブを達成した投手はこれまでに31人いるが、そのうち200セーブに到達したのは上記の6名だけ。一気にその数が減ってしまう。
重圧のかかるポジションであり、接戦であればほぼ毎試合ブルペンで肩を作ることになる仕事。やはり調整の難しさがつきまとうのに加え、故障のリスクも大きくなる。
また、チームにひとつしかその枠がなく、どこかのタイミングで中継ぎや先発に配置転換となると、セーブ数は停滞してしまう。今年の松井裕樹がまさにそうで、不振から中継ぎへの転向、シーズン終盤は先発も試されたことから、連続30セーブの記録は3年でストップ。「33」→「30」→「33」と順調に積み上げていたセーブ数は「5」に留まった。
そんなこともあって、来季の松井の起用法がどうなるのかというところに注目が集まったが、契約更改後の会見で監督から「来年もリリーフで」と言われたことを本人が明かしており、まずは守護神の座を奪い返すところからのスタート。山崎も新任の三浦大輔投手コーチから「3人でビシッと」と注文が来ているように、2人ともある程度の地位は築きながらも、課題を抱えた状態での新シーズンとなる。
良いスタートを切ったとはいえ、重要なのはここから。“岩瀬超え”を目指すのなら、どんなに不調の年でも20~25セーブは記録しておきたいところだろう。2人の“日本最強クローザー”への道は、まだはじまったばかりだ。
文=八木遊(やぎ・ゆう)