補強は進まず、金子と西が退団
今季はパ・リーグ4位に終わったオリックス。シーズン中盤までは3位争いに加わっていたものの、最終的には3位の日本ハムと8ゲーム差、優勝した西武とは21.5ゲームもの差をつけられる格好で4年連続のBクラスに終わった。
責任を取るかたちで、3年間チームを率いた福良淳一監督が辞任。来季からは西村徳文ヘッドコーチが昇格し、チームの指揮を執る。ロッテで監督を務めた時には1年目(2010年)にシーズン3位からクライマックスシリーズを勝ち抜き、日本一まで上り詰めているだけに、期待は高まる。
逆襲を目指すチームは、日本シリーズ開催中の10月29日に新助っ人・メネセスを獲得。3Aで打率.311、23本塁打を記録した強打者を獲得するなど、早いタイミングから補強に動いていた。
ところが、以降は中島宏之や金子千尋が相次いで自由契約を希望してチームを退団。中島は巨人へ、金子は日本ハムへとそれぞれ移籍した。
加えて、FA宣言した西勇輝とも残留交渉を行っていたが、阪神への移籍が決定。そのFA市場では西武からFA宣言した浅村栄斗の獲得を目指したが、交渉の席にすらつくことができずに破断。楽天に持っていかれてしまう。
すこし不安な門出となった西村オリックス。しかし、ベテランの移籍はチームにとってピンチである一方、若手にとってはチャンス。特に投手陣は金子と西という2枚が抜けたものの、有望な若手がひしめくポジションだけに、新たに生まれる競争が良い方向に転がる可能性というのも大いにあるだろう。
山本由伸、黒木優太らに先発転向の可能性も
金子や西が抜けた枠を巡る争いには、山本由伸や黒木優太、吉田一将といった、これまでに中継ぎで結果を残してきた選手たちの名前が挙がる。若くしてリリーフとして一軍で結果を残した男たちの新たな一面が見られるか、大きな注目が集まる。
加えて、小林慶祐にK―鈴木、育成出身の榊原翼といった若手にもチャンスが。とくに山本と榊原のふたりは2019年でも21歳と若く、まだまだ伸び盛り。先発にチャレンジすることで、大きなステップアップを果たす可能性はある。
そして、FAで流出した西の補償として、阪神からプロ3年目の竹安大知を獲得した。一軍での実績こそないものの、今季はファーム日本一に輝いた阪神二軍で14試合に登板して6勝負けなし、防御率は1.30という圧巻の成績。移籍をキッカケに大ブレイクなるか、こちらも期待がかかる。
ローテーションの軸として期待がかかるのが、2年目の助っ人・アルバースだろう。今季はシーズン途中で離脱したが、9勝2敗で防御率3.08という成績。シーズン途中に契約延長を勝ち取っている。
新たなエース候補としては、山岡泰輔に大きな期待がかかる。2年目の今季は不振もあって先発から中継ぎに配置転換されたが、先発復帰後は安定した投球を披露。苦しい時期に“何か”を掴んで戻ってきた。契約更改後の会見でも、「金子さんや西さんのような存在になりたい」という責任感あるコメントを残しており、新エースとしての自覚は十分。2019年は山岡にとって重要な一年になりそうだ。
また、今季思うような活躍ができなかった東明大貴やディクソンといったところも当然黙ってはいないだろう。2017年のドラフト1位・田嶋大樹もいる。ルーキーイヤーとなった今季は6勝をマークしたが、肘の故障もあり7月以降の登板はなし。肘は回復に向かっており、2019年は年間を通じての活躍に期待がかかる。
金子や西とちがい、その他の投手に確固たる実績がないのは疑いようのない事実だ。しかし、野球界に限らず「役割が人を育てる」という言葉もある。若手投手にとっては、まだまだ「与えられた」役割かもしれないが、その与えられた役割を果たすべく奮闘することで、各選手が思わぬ成長を見せることだってある。
幸いにも、オリックスには増井浩俊という守護神が控えている。大砲の揃う打線も強力で、課題の先発陣がなんとか試合を作っていくことができれば、上位争いに加わる可能性も少なくない。
各投手がこの危機をチャンスととらえ、“競争”からチームの底上げを…。来季のオリックスに注目だ。