ビシエドは2厘届かず
中日のダヤン・ビシエドと、ソフトバンクの柳田悠岐――。このふたりの共通点と言えば、昨季『首位打者』のタイトルを獲得したということ。ビシエドは.348で自身初、柳田は.352で3年ぶり2度目の戴冠だった。
ともにハイレベルな争いになった昨季の首位打者争い。近年のパ・リーグで打率.352を超えているのは、2015年に.363のハイアベレージを残した柳田自身と、その年の打率2位・秋山翔吾(西武/.359)のふたりだけ。セ・リーグの方も、昨季ビシエドが記録した.348を超えたのは、2010年の青木宣親(.358)まで戻らなければ出てこない。
近年において、特に大きな壁となっているのが『打率.350』というライン。特にセ・リーグではそれが顕著だ。
パ・リーグでは、上でも触れた柳田と秋山によって近5年のうちに3度の“.350超え”が記録されているものの、セ・リーグでは2010年の青木と、同年の打率2位・平野恵一(阪神/.350)までさかのぼる。以降8シーズンにわたって打率.350に届いた選手が出ていない。
有力候補は多数
果たして、今季こそ『打率.350の壁』を壊す打者が出てくるだろうか。有力な候補になるのが、昨季.348というハイアベレージを残したビシエドだろう。
来日3年目で自身初の首位打者に輝いた男であるが、メジャー時代と日本での2年間含め、実は一度もフルシーズンで打率3割を超えたことがなかった。それが昨季、突然の覚醒。爆発的な打棒でタイトルを手中に収めたのだった。
圧巻だったのがオールスター以降の猛打で、後半戦だけの打率は.402という凄まじい成績。アクシデントさえなければ、2年連続の首位打者はもちろん、あと一歩届かなかった“.350超え”も非現実的な話ではない。
また、昨季ビシエドに次ぐリーグ2位の打率をマークした坂本勇人(巨人/.345)も候補のひとりだ。今季は丸佳浩が加入してくることもあって、坂本へのマークが若干弱くなることも考えられる。良いコンディションを保って、本塁打にこだわらなければ、あっさり.350の壁を突破しても驚きはない。
ほかにも、DeNAの宮崎敏郎も忘れてはならない男。2017年の首位打者は、今季も打率.318をマーク。打撃スタイルの変更で本塁打数を15本から28本まで飛躍的に増やしたなか、打率は.323から.318としっかりキープしている。
特に昨季は三振率(三振1個あたりの打席数)が両リーグトップの13.1と優秀な数字を残しており、とにかく三振が少なかった。それでいて「本塁打を除いた打球がヒットになる確率」を示すBABIPという数値は.308と比較的低めで、昨季の宮崎は“運が悪かった”とも言える。この数値を上げることができれば、打率.350超えも夢ではない。
そして、最後に紹介するのがセ・リーグで最後に『打率.350の壁』を打ち破った男・青木宣親である。メジャー時代は一度も3割に届かなかった男だが、日本では3度の首位打者に2度のシーズン200安打超えと輝かしい実績を残した。NPBでの通算打率.329(4000打数以上)は歴代でも断トツの数字である。
宮崎と同じく三振の少ない打者で、三振率は宮崎に次ぐ2位。37歳という年齢が気がかりではあるが、昨季は後半戦で打率.349をマークするなど、衰える気配は見えない。
セ・リーグ9年ぶりの“打率.350超え”は見られるか…。打撃成績欄を要チェックだ。
文=八木遊(やぎ・ゆう)