オリ熱コラム2019 第2回・西野真弘
昨年の秋季キャンプ、全選手が早上がりの日に最後までバットを振り続けていたのが、オリックスの“ガッツマン”西野真弘だった。驚いたのは体が大きくなり、スイングが力強くなっていたこと。2015年のルーキーイヤーから注目されていたスイングスピードの速さも、さらに磨きがかかっていた。
「また怪我して出れないのかと思いました。とにかく悔しいシーズンでした」
2018年シーズンは、2017年の秋季キャンプから福良淳一前監督とともに取り組んだフォームを見直したが、開幕直後にファームへ。「1カ月間、自分自身と向き合った」結果、5月には一軍に再昇格し、彗星のごとく現れたルーキーイヤーを彷彿とさせる活躍を見せた。特に三塁打を4本記録するなど、果敢に次の塁を陥れようとするガッツ溢れる姿は、ルーキーの福田周平とともにチームを鼓舞していた。
1年を通して戦うために
ところが8月11日、守備練習中に打球が額を直撃。そのまま病院で検査を受けると、前頭骨骨折と脳震盪という診断が下され、出場選手登録を抹消された。その結果、出場試合数は60試合にとどまったが、打率は「.293」、2015年と同じように好調な中で戦列を離れる“もどかしいシーズン”になってしまった。
「怪我をしてからは動けない時期もあったので、ウエイトを中心に身体を鍛え直そうと思いました。年間を通して戦えるように体を大きくしようと。秋季キャンプには体重を増やして臨み、とにかくフルスイングすることを心掛けました。フルスイングすることによって、バットを振る際に全身を使うのでキツいんですけど、それでも振るというのを意識しました」
4年間のプロ生活の中で、実働できたのは約2年。残りの約2年を不完全燃焼のまま終えてている西野にとって「年間を通して戦える身体づくり」は急務だった。力強いスイングをしている西野を見た西村徳文新監督からは、「強いスイングをするには下半身がしっかり使えていないと振れない」というアドバイスを受け、自主トレでは「下半身の使い方を意識」してきた。さらには、「増量したことで下半身の負担も大きくなるため、トレーニングは今まで以上にしていた」という。
新たなる挑戦
昨年は、西野が主戦場としてきたセカンドを、大城滉二、福田周平、山足達也らが争い、西野は小谷野栄一の不調などもあってサードで起用されることが多かったが、本人は「サードに挑戦できたことが収穫。その分、自分の可能性も広がるし、試合に出れるチャンスも増える!」と前向きに捉えている。
しかしオリックス首脳陣は今季、ドラフト2位で指名した大卒ルーキーの頓宮裕真をサードで起用する方針を示唆。西野は吉田正尚級の大砲候補として期待を寄せられている頓宮ともポジションを争うことになるが、「他を気にしてもしょうがない。自分の持っている力、今までやってきた事を全て出すことがアピールに繋がると思う」と焦りはない。
今年は、中島宏之の退団、小谷野の引退により、T-岡田や安達了一とともにリーダーのひとりとしてチームをけん引するような働きも求められるが、「チームも若返りますし、チームを引っ張っていける存在にならないといけない。レギュラーを獲る事を目標に、昨年の悔しさをぶつけたいと思っている」と自らに期待される役割も自覚し、その決意を口にした。
昨年は西野の離脱後、CS争いを繰り広げていた際に「西野がいれば……」と思うが多々あった。チームの主軸として、精神的支柱として期待される今季は、周りも思わず微笑んでしまうような西野の明るい笑顔を、シーズンを通して見せてもらいたい。
取材・文=どら増田