最も勝利に貢献した日本人投手は…?
メジャーリーグで選手の総合力を表す成績の一つ「WAR(Wins Above Replacement)」という指標は、その選手が代替可能な選手に比べてどれくらい勝利を生み出すかを示す。WARは、野手と投手を同じ土俵で総合的に評価する点でも有効だ。
前回の打者編に続き、MLB記録サイトの代表格「Baseball Reference」版から、今回は日本人投手が記録したシーズンWARのトップ20を紹介しよう。
▼ 日本人投手のシーズンWARトップ20
2位 5.6 ダルビッシュ有(2013年/レンジャーズ/26歳)
3位 5.4 松坂大輔(2008年/レッドソックス/27歳)
4位 5.3 黒田博樹(2012年/ヤンキース/37歳)
5位 5.2 田中将大(2016年/ヤンキース/27歳)
6位 4.7 野茂英雄(1996年/ドジャース/27歳)
7位 4.7 野茂英雄(1995年/ドジャース/26歳)
8位 4.1 松坂大輔(2007年/レッドソックス/26歳)
9位 4.0 黒田博樹(2013年/ヤンキース/38歳)
10位 4.0 大家友和(2002年/エクスポズ/26歳)
11位 3.8 ダルビッシュ有(2017年/レンジャーズ・ドジャース/30歳)
12位 3.6 上原浩治(2013年/レッドソックス/38歳)
13位 3.6 黒田博樹(2010年/ドジャース/35歳)
14位 3.6 野茂英雄(2003年/ドジャース/34歳)
15位 3.5 ダルビッシュ有(2014年/レンジャーズ/27歳)
16位 3.5 ダルビッシュ有(2012年/レンジャーズ/25歳)
17位 3.5 斎藤 隆(2007年/ドジャース/37歳)
18位 3.4 黒田博樹(2011年/ドジャース/36歳)
19位 3.3 田中将大(2015年/ヤンキース/26歳)
20位 3.2 斎藤 隆(2006年/ドジャース/36歳)
※NPBを経験した選手
上位13位までをイチローと松井秀喜が占めた野手とは異なり、投手では、上位12位までに8人の投手がランクインした。
堂々の1位は2013年に7.2をマークした岩隈久志。2位のダルビッシュ有も同じ13年に5.6を記録している。2人は、この年のサイヤング賞レースでダルビッシュが2位、岩隈が3位とリーグでも屈指の活躍を見せた。ともにメジャー2年目での躍進だった。
大混戦の投手編
3位・松坂大輔の08年も同じくメジャー2年目だった。この年の松坂は打線の援護にも恵まれ、.857(18勝3敗)という驚異的な勝率を記録。規定に達した投手のシーズン勝率としては、日本人歴代1位である(勝率8割超えも唯一)。
4位の黒田博樹は37歳シーズンに自己ベストをマーク。他にも9位、13位、18位とダルビッシュと並び最多4度のトップ20入りを果たした。いずれも35歳以降での達成というから驚くしかない。
そして5位が、2016年の田中将大でWAR5.2をマーク。WAR5.0以上がオールスター級とされるが、これまで5人の日本人投手がこの大台を突破していることになる。しかし、田中のWARはその後1.1、2.9と不本意な数字が並んでおり、本来の力を出し切れていない。
6位・7位・14位にランクインしたのが、MLB挑戦のパイオニア・野茂英雄だ。渡米1年目と2年目に4.7をマークしたが、1995年はストライキ明けのためシーズンが3週間ほど短かった。3年目以降は苦しいシーズンも多かったが、シーズン2ケタ勝利を7度も達成。メジャー通算123勝は今なお日本人歴代トップにして唯一の100勝超えである。
これ以外には、通算51勝の大家友和(2002年)と、リリーフ投手では上原浩治(2013年)、斎藤隆(2006年、07年)がトップ20入りを果たした。イニング数が少ないリリーバーはWARで高い数値を出すのが困難とされる。ともに30代後半での活躍だった。
今季は新たに菊池雄星(マリナーズ)がメジャーに挑戦する。1年目からトップ20入りができるような活躍に期待したい。
文=八木遊(やぎ・ゆう)