オリ熱コラム2019 ~第5回・山岡泰輔~
「山岡は話にならない!あり得ない!開幕投手わからない。撤回するかもしれない。あのプレーは他の選手に示しがつかない。副キャプテンも剥奪するかもしれない。あんなことをされたら、チームの士気も下がる!」
22日に京セラドーム大阪で行われた阪神とのオープン戦。西村徳文監督から開幕投手を託された山岡は、6回1失点、被安打3というまずまず内容でシーズン開幕前の最終登板を終えた。しかし、ベースカバーへの遅れや悪送球などが、開幕投手として山岡に大きな期待を寄せていた指揮官の逆鱗に触れたのだ。その結果が冒頭のコメントになる。
オリックスの指揮官に就任以降、西村監督が公の場でここまで怒りを露わにしたのは初めてのこと。報道陣から球質について尋ねられると、「きょうはそういう問題じゃない」と会見を切り上げた。この日の試合後、高山郁夫投手コーチから問題点を指摘されたという山岡は、「暴投はあることだけど、カバーはできること。もう一回引き締めていきます」と話し、24日の試合前には監督との話し合いの場が設けられた。その場で改めて開幕投手に指名されると「立場が違うことをあらためて感じた」と、開幕投手と副キャプテンに指名された責任の重さを痛感しているように感じられた。
真のエースとなるために
「みなさんからエース、エースって言われるんですけど、ここにネコさん(金子弌大)と西さんがいたら言わないでしょ? 2人がいなくなったから繰り上がっただけで、まだエースじゃないですよ」
開幕投手も明らかになっていない春季キャンプでのこと。山岡は自身がエースと言われることが「心外」であることを強調していた。山岡が語ったように、昨年まで毎年のように開幕投手の筆頭候補だった金子弌大は自由契約で日本ハムへ、昨年の開幕投手を務めた西勇輝はFAで阪神へと、それそれ移籍した。
“エース”不在となったオリックスだが、エース候補の筆頭格に山岡がいることは間違いない。そして山岡自身も「開幕から逆算して」ここまで準備をしてきた。副キャプテンとしても「ネコさん、西さんの穴を若手全員で埋めなきゃいけない。僕ひとりでは無理だけど、全員でやれば思った以上に強い」と、投手陣全体をしっかりと見ている。あとは誰もが納得する結果さえ残せれば、エースと呼ばれることに何の異論もないはずだ。
毎年、“いくつか”の目標を立てている山岡は、今年も3つの目標を立てた。小目標は「開幕の6人に入ること」、中目標は「1年間投げること」、そして大目標に「ケガをしないこと」を掲げる。すでに小目標は達成される見込みだが、大目標の「怪我をしないこと」は、昨年の小目標だった。そこからは、1年を通して投げ続けること重要性を感じたことがうかがえる。
本当の意味で“エース”と呼ばれるため、3月29日、そのスタートラインとなる札幌ドームのマウンドにのぼる。初の開幕投手という大役を務めあげ、チームを勢いづけるようなピッチングを披露できるか、大きな志を秘めた小さな“エース候補”に注目したい。その先には、自身も意識する東京五輪への道が続いているはずだ。
取材・文=どら増田