開幕3連戦で見せた勝負所での集中力
待ちに待ったプロ野球が開幕。まだ開幕カードが終わっただけだが、開幕戦から3試合が延長戦に突入するなど、随所に見所があった。その中でひと際大きな存在感を示したのが、日本ハムの中田翔だった。オリックスとの開幕戦では、延長10回裏に2者連続の敬遠で一死満塁となり打席へ。ここで「主砲の意地」とばかりに、逆転サヨナラ満塁弾を叩き込んだ。
続く2戦目も、2点ビハインドの状態で迎えた9回裏に同点タイムリーを放つなど、ここ一番での勝負強さを見せている。結局、開幕カード3試合で9打点を挙げる活躍を見せた中田。突出した打率や本塁打数を誇るわけではないが、過去5シーズンで100打点を超えたのが4度と、打点シチュエーションでの勝負強さが光る。
得点圏打率を見ていくと…
▼ 09年(プロ入り2年目・20歳)
22試合 打率.278 0本塁打 1打点
得点圏打率.200(※規定未到達)
▼ 10年(プロ入り3年目・21歳)
65試合 打率.233 9本塁打 22打点
得点圏打率.283(※規定未到達)
▼ 11年(プロ入り4年目・22歳)
143試合 打率.237 18本塁打 91打点
得点圏打率.314
得点圏打率 1位:栗山巧(西武).380
▼ 12年(プロ入り5年目・23歳)
144試合 打率.239 24本塁打 77打点
得点圏打率.198
得点圏打率 1位:聖澤諒(楽天).373
▼2013年(プロ入り6年目・24歳)
108試合 打率.305 28本塁打 73打点
得点圏打率.297
得点圏打率 1位:長谷川勇也(ソフトバンク).371
規定打席に到達した2011年以降、打率.250を超えたのは1度のみだったが、得点圏打率に限っていえばシーズン打率を上回っているケースがしばしば見られる。なかでも印象的なのが、初の規定打席に到達した2011年。この年の中田は開幕から19打席ノーヒットと序盤苦しむも、次第に成績を伸ばしてシーズン半ばには4番に定着。打率こそ.237と低かったが、得点圏打率はリーグ8位の.314を記録し、リーグ3位となる91打点をあげた。
100打点超え4回の秘密?
続いては、2014年シーズンから昨年までを見ていく。
▼ 14年(プロ入り7年目・25歳)
144試合 打率.269 27本塁打 100打点☆
得点圏打率.295
得点圏打率 1位:陽岱鋼(日本ハム).379
▼ 15年(プロ入り8年目・26歳)
143試合 打率.263 30本塁打 102打点
得点圏打率.281
得点圏打率 1位:柳田悠岐(ソフトバンク).413
▼ 16年(プロ入り9年目・27歳)
141試合 打率.250 25本塁打 110打点☆
得点圏打率.264
得点圏打率 1位:藤田一也(楽天).330
▼ 17年(プロ入り10年目・28歳)
129試合 打率.216 16本塁打 67打点
得点圏打率.195
得点圏打率 1位:柳田悠岐(ソフトバンク).379
▼ 18年(プロ入り11年目・29歳)
140試合 打率.265 25本塁打 106打点
得点圏打率.300
得点圏打率 1位:柳田悠岐(ソフトバンク).389
プロ入り7年目となる2014年に初の打撃タイトルとなる打点王を獲得するなど、打者として脂が乗ってきた中田だが、得点圏打率を見るとリーグでも真ん中くらいの順位だ。しかし、シーズン打率と比べると得点圏が打率より2分から3分ほど上がっている。
さらに中田の個性を際立たせているのが、犠牲フライの数だ。規定打席に到達した8シーズン中、中田が犠牲フライのリーグ3位以内に入ったのは半数の4回。タイトルこそ取り逃したが、キャリアハイとなる106打点を稼いだ昨季は13本の犠牲フライを記録し、2位の吉田正尚(オリックス)の8本を大きく上回るダントツの1位だった。打率だけでは測れない勝負強さが現れている。
FA権を行使せずに残留を決めて迎えた今季、期する思いを胸に開幕から好スタートを切った中田がどんな成績を残すのか、要注目だ。
文=福嶌弘(ふくしま・ひろし)