新連載:「令和」の野球 第1回
「平成」から「令和」へ。新たな時代の息吹が聞こえてくる。野球界もまたその例外ではいられない。
ラグビーのW杯が今秋に日本で開催されれば、来年は東京五輪とビッグイベントが目白押し。日本では人気ナンバーワンスポーツと言われる野球だって安閑としていられない。むしろ、少年たちの野球離れや、旧態依然の指導法にテレビ地上波中継の減少など課題は山積している。
いま、球界はどんな改革に取り組み、魅力ある野球に変革をしていくのか? 全8回の連載で迫ってみたい。
MLBの変革
今春、米大リーグ機構は大胆なベースボール改革を発表した。以下は主な改革案の概要になる。
・高性能計測器「トラックマン」を活用したストライク判定
・投手交代以外の監督、コーチのマウンド訪問禁止
・内野の変則シフト規制
・投手は少なくとも打者3人に投げる(ワンポイントの禁止)
7項目に及ぶ改革案は、MLBが業務提携する米独立アトランティックリーグで今年から試験採用して、うまくいけば来年以降、メジャーでも取り入れる方向だと言う。
また、メジャーのオープン戦では「ピッチクロック」という新ルールも試験採用された。こちらは、無走者の場合は15秒以内、走者ありの場合は20秒以内で投球しなければ「ボール」が宣告される決まりで、マイナーリーグではすでに2015年から採用されている。
ちなみに、メジャー投手の平均21.5秒に対して、ドジャースの前田、ヤンキースの田中両投手は共に27.0秒でこれは両リーグワースト2位に相当するという。マウンドでの「間」や打者との駆け引きを重視する日本人投手には今後、厄介な「宿題」となりそうだ。
先をいくベースボール
これらの改革試案に共通しているのは時短問題だ。そこに野球界全体の問題点と危機感が表れている。米国で人気の4大プロスポーツとして定着しているのが野球(MLB)、アメリカンフットボウル(NFL)、バスケットボール(NBA)に、アイスホッケー(NHL)だ。このうち、試合時間が決まっていないのは野球だけ。他競技に比べて、止まっている時間が長く、スピード感でも劣る。
これは日本でも例外ではない。白熱の熱戦なら許せても、毎年、スピードアップが提唱されながら平均試合時間は3時間超。加えてサッカーのJリーグ、バスケットのBリーグなどプロの組織が誕生すると露出度が増え、それが少年たちの野球人口の減少を招いていると指摘する声もある。
テレビの野球中継を見ていて、勝負どころの終盤に差し掛かると時間切れという体験をした人は多いと思う。ネット全盛とは言え、まだまだすべてが解消とはいかない。
アメリカがくしゃみをすると日本は風邪をひく。昔からの日米関係を揶揄した言葉だ。野球界もまた、米国の新ルールがすぐに日本にやって来る。人気回復のために「無茶ぶり」とも思えるMLBの改革案が近い将来、日本でも適用される確率は高い。(※次回は11日掲載予定)
文=荒川和夫(あらかわ・かずお)