コラム 2019.04.23. 11:00

日本一の“ホールド男”宮西尚生の特異能力

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日本ハム・宮西尚生

白球つれづれ2019~第16回・ファイターズ・宮西の投球術~


 高校野球の春季大会が花盛りだ。夏の甲子園に向けてここからが本番。投手にとっては1球のミスが命取りにつながる。噂の怪物、大船渡高の佐々木朗希のような160キロを超す剛速球は夢のまた夢。多くのピッチャーはいかにコントロール良く打者を打ち取るかに腐心する。そんな球児や少年野球に汗する子供たちに手本となるプロ選手がいる。日本ハムの中継ぎエース・宮西尚生の投球術に注目して欲しい。

 今月13日のロッテ戦、7回に3番手として登板すると中村奨吾以下のクリーンアップをわずか11球で料理、試合も3対0で勝利して宮西は通算300ホールドの大記録を樹立した。プロ野球史上初の快挙である。その後も快投は続き21日のロッテ戦でもホールドを積み上げて目下、302。しかも防御率はゼロだから非の打ち所がない。

 宮西の球種は主に140キロそこそこのストレートと120~130キロ台のスライダー。近年はたまにカーブやシンカーも駆使するが、決して球種の豊富な投手ではない。それでいて、なぜ、球界を代表する中継ぎエースになれたのか?最大の武器は左腕の横手から繰り出す変則投法と自在に操れる投球術にある。

「自分の場合、まっすぐが速いわけじゃないし、変化球も多くない。コントロールもまあまあ、唯一、投げる位置を起用に動かせるのがセールスポイントかな」


球児の教科書に


 多くの投手はキャンプから理想の投球フォームを掴むために調整する。体重移動、ステップ幅にリリースポイントなどに狂いがないか? とチェックしていくわけだが、宮西の場合は違う。基本は大事にしたうえで、その日の調子や球のキレに応じて、投球の際に肘の角度を上げ下げしたり、リリースポイントをボール1個分ずらしたりと変幻自在の微調整を加えるわけだ。

 同じアウトローにスライダーを投げた場合でも、投球の角度が1度違うだけで打者にとっては別の対応が必要になる。野球中継で紹介される9マスのストライクゾーンを例に取れば、そこに何通りかの角度やスピードの変化を加えれば9通りのゾーンは20にも30もの違うボールになる。これにストレートやシンカーも同様に投じて、プレート板の踏み出す位置を右、左と変えれば何百もの変化を生み出すわけだ。西武の安打製造機、秋山翔吾が最も苦手な投手として宮西を上げている。「まったく、ヒットのイメージがわかないんですよね」と脱帽するほど、投球術は際立っている。

 ホールドという中継ぎ投手の評価法は1996年にパ・リーグで採用され、両リーグで現行ルールになったのは2005年からと意外に歴史は浅い。勝敗やセーブが付かない救援投手のうち、同点で登板し一死以上のアウトを取り同点のまま降板、セーブ条件を満たす状況で一死以上のアウトを取りリードを保って降板した場合などに記録されるが、いずれの場面も厳しい状況での出番となる。

 「調子が悪くても何失点しても、すぐに次の登板が来る。だからお立ち台ではしゃぎたくてもはしゃげない。心の底から笑えるのは優勝したときだけ」。これが宮西の語る「職場」なのだ。

 前人未到の世界に踏み出した男の次なる目標は350、400ホールドと積み上げて中継ぎ投手にもスポットライトを当ててもらうこと。その先には元中日のセーブ王、岩瀬仁紀の持つ15年連続50試合登板(あと4年)通算1002試合出場(あと364)とまだまだ成し遂げたい夢がある。

 一級品の球威や才能がなくても、努力と工夫でチームにかけがえのない存在になる。やはり、この男、これからの球児の教科書にふさわしい。


文=荒川和夫(あらかわ・かずお)

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