“平成”の時代に成しえなかった記録
パ・リーグはソフトバンクが貯金を8個つくり、やや抜け出している。2位以下は貯金1から借金1の1ゲーム差の中に4チーム(楽天、日本ハム、西武、ロッテ)がひしめき合う混戦模様。オリックスが借金8個で低迷しているが、この中から首位ソフトバンクに詰め寄るチームは出てくるのだろうか。
2連覇を目指す西武は、現在ロッテと並ぶ4位で、苦しい戦いを強いられている。リーグ最下位の「4.84」というチーム防御率ながら、2位争いに食い込んでいる要因は、開幕から好調を維持する打撃陣のお陰だろう。
FAで抜けた浅村栄斗の穴もなんのその、得点数は今季もリーグ1位(167得点)。昨季同様、今季も“打ち勝つ”スタイルでの戦いを続けている。打率と本塁打はリーグ3位ながら得点トップの理由は、四球の多さ=出塁率の高さと、盗塁の多さによるところが大きい。
比較的メンバーや打順が固定されている西武だが、開幕から同じ打順を任されているのは2人だけ。4番の山川穂高と1番を打つ金子侑司だ。主砲の山川は、ともにリーグ1位の本塁打と打点を記録するなど、昨季リーグMVPの貫禄すら感じさせる活躍を見せている。
一方、リードオフマンを務める金子は、ここまで打率.209、出塁率.284(ともに規定打席到達38人中35位)と、打撃そのものは低調である。特に5月に入ってからは、30打数3安打で打率は1割ちょうど。打撃不振ではあるが、金子の最大の武器である“足”でチームに貢献している。
目立つのは盗塁数とその成功率の高さ。今季はすでに盗塁企図が16回を数え、そのうち成功が15回。93.8%という高い成功率で存在感を示し、盗塁数もリーグ2位の中村奨吾(ロッテ)に6個の差をつける突出ぶりである。
今後、出塁率が上向けば、盗塁数も必然と増えていくだろう。2016年に盗塁王を獲得した時の出塁率が「.331」。シーズンを通してこの水準まで上げることができれば、自身2度目の盗塁王も視界に入ってくるはずだ。
現時点でシーズン67盗塁ペースだが、金子には是非ともシーズン70盗塁の壁に挑戦してもらいたい。プロ野球界で最後に70盗塁に達したのは高橋慶彦氏(広島)で、1985年までさかのぼる。パ・リーグだと1978年の福本豊氏(阪急)が最後だ。
条件や状況は異なるものの、シーズン70盗塁はプロ野球史上9人(14度)だけが達成した希少な記録。そのためには、今後の打率・出塁率アップは必須条件となる。もちろん、本人はチームへの貢献だけを考えていることだろう。しかし、3番に座る秋山翔吾の状態も上向くなか、金子の出塁増がチームの得点数や浮沈に及ぼす影響は少なくない。リードオフマンとして評価し、起用しつづけてくれる辻発彦監督の期待に応えるような活躍を期待したい。
文=八木遊(やぎ・ゆう)