マリナーズって好調じゃなかったの!?
イチロー元選手の引退試合から間もなく2カ月が経つ。今季の開幕を東京で迎えたマリナーズは、3月の6試合を5勝1敗で終える好スタート。4月に入っても好調を維持し、一時は13勝2敗でア・リーグ西地区の2位以下に4ゲーム差をつけ、首位を快走していた。
ジェイ・ブルースやエドウィン・エンカーナシオンなどの移籍組が開幕から本塁打を量産。開幕から20試合連続本塁打というメジャー記録を更新するなど、打線はリーグ屈指の破壊力を誇った。開幕当初に比べると得点力はやや落ち着いたが、今季の総得点数は現在もメジャー2位タイにつけている。
しかし「11」の貯金があった時点からマリナーズは失速。約1カ月で22勝25敗と借金生活に陥り、現在は首位のアストロズを9ゲーム差で追いかける地区4位の立場である。
他球団を圧倒する失策数
失速の主な要因は失点の多さだろう。その数はメジャー最多の「270」にも上る(1試合平均5.74)。しかし投手陣にすべての責任を押しつけるわけにはいかない。チーム防御率4.89はメジャー22位だからだ。つまり今季のマリナーズは、自責点にならない失点(非自責点)が飛び抜けて多いことになる。その数は「42」で、リーグで2番目に多いブレーブス(23)の2倍近くに上る。
要するに、失策の多さが非自責点の多さに直結している。今季の失策数は30球団で唯一、試合数を上回る(47試合で50失策)。失策数2位がホワイトソックスの37個なので、その多さがよくわかるだろう(最少はレイズとロイヤルズの15失策)。ちなみに昨季のマリナーズは、162試合で88失策だったが、今季はオールスター前にも昨季の数字を上回る可能性すらある。
もしシーズン終了時点で失策数が試合数を上回っていれば、1993年のロッキーズ以来、26年ぶりとなる。その年のロッキーズといえば、162試合で167失策を記録したが、エクスパンション1年目のいわば寄せ集めチームだった。
今季のマリナーズも悪い意味で寄せ集めチームともいえる。オフに多くのトレードを実行したマリナーズ。野手陣の多くが昨季から入れ替わっている。打撃面では活躍を見せる選手も守備では投手の足を引っ張るシーンが目立つ。チーム最多失策は遊撃手のティム・ベッカムで12個。一塁手のライオン・ヒーリー(8個)、ドミンゴ・サンタナ(6個)がそれに続く。
マリナーズといえば、現在のメジャー30球団で最もポストシーズンから遠ざかっているチームでもある。今季は開幕ダッシュで夢を見たファンも多かったが、その守備が大きく改善しない限り、1カ月前に見た夢は幻で終わることになるだろう。
文=八木遊(やぎ・ゆう)