プロ初の中4日登板で連敗ストップ
6月2日、横浜スタジアムで行われたDeNA戦に勝利したヤクルト。この白星は実に5月12日の巨人戦以来のもので、連敗はリーグワーストタイの「16」でストップした。
連敗ストップの原動力となったのが、先発したプロ4年目の原樹理。この日はプロ入り後初となる“中4日”で挑んだマウンドだったが、持ち味の打たせて取る投球で強力・DeNA打線を翻弄。アクシデントにより7回途中での降板を余儀なくされたのは気がかりではあるものの、初の中4日で6回2/3を1失点に抑える力投を見せた。
2015年のドラフト1位で東洋大からヤクルトに加入した右腕。ルーキーイヤーから一軍での登板機会を得るものの、1年目が2勝8敗、2年目も3勝11敗と黒星が大きく先行。ひと皮むけた姿を見せた昨季でも6勝7敗と、これまでのキャリアで貯金を作ることができていない。
勝敗については投手ひとりの責任とはいかないものの、これまでの3年間で規定投球回への到達がないという点も気になるところ。まだプロ4年目と言っても、今永昇太(DeNA)や多和田真三郎(西武)、岡田明丈(広島)といった同期の大卒投手の名前を見ると、やはり物足りなさも感じてしまう。
“計算の立つ投手”として存在感
ここで、今季の原樹理の成績を改めて振り返ってみよう。
▼ 原樹理・今季成績
防御率:4.67(規定到達者で11位)
登板数:10試合(規定到達者で1位タイ)
完 投:1
完 封:0
Q S:6(6位タイ)
勝 利:3(14位タイ)
敗 戦:5(2位タイ)
ホールド:0
セーブ:0
勝 率:.375(規定到達者で11位)
投球回:61回2/3(9位)
被安打:68(1位タイ)
被本塁打:7(10位タイ)
奪三振:46(11位)
与四球:16(16位タイ)
与死球:5(2位)
暴 投:5(1位)
失 点:36(2位)
自責点:32(2位)
※()内の順位はすべてリーグ内の順位
個別の数字を見ていくと、防御率は規定投球回到達者のなかで2番目に悪く、ほかにも上位に来るのは「敗戦」や「被安打」、「失点」「自責点」といった良くない項目が多い。その中で、目を引くのが「QS」の数である。
「QS」とは“クオリティ・スタート”の略で、今では日本でも浸透しつつある先発投手を評価する指標のひとつ。条件は「先発が6回以上を投げ、自責点3以内に抑えた時」に記録されるもので、この数が多ければ多いほど、その投手は安定して試合を作ることができているということが分かる。
原のQS数はここまで6つで、これはリーグ6位タイの成績。チーム内ではトップの数字となっており、現状のヤクルト先発陣のなかでは最も計算の立つ投手だということが言えるだろう。
また、チームの先発投手で平均投球回が6回を超えているのは原と小川泰弘のふたりだけ。リリーフ陣への負担増加が懸念点として挙げられるなか、安定してイニングを稼ぐことができる原の存在はチームにとっても大きい。2日のDeNA戦で見せた投球が継続できれば、おのずと結果もついてくるはずだ。
中継ぎの経験をキッカケに躍進の原動力へ
思い返してみると、昨季の原にとってひと皮むけるキッカケとなったのが、シーズン途中の“中継ぎ転向”だった。
開幕から1勝もできずに5連敗で迎えた6月9日のオリックス戦。この日は初回から6点の援護をもらって自身の連敗ストップに期待がかかったものの、2回までに3失点を喫して無念の降板。チームは勝利を収めたものの、原にとっては悔しい一戦となった。
そして、この試合を最後に、原は中継ぎへの転向を命じられる。それでも、中継ぎでは12試合連続無失点と安定した投球を披露。新たな持ち場で首脳陣にアピールを続けると、約1か月後には先発に復帰。そこから4連勝を含む5勝(2敗)をマークしてチームの2位浮上の原動力となった。
昨年8月、初完封を達成した試合後のインタビューでは、本人の口から「中継ぎを経験して、ひとつひとつアウトを積み重ねることが大事ということに気がついた」というコメントも飛び出した。このことからも、中継ぎへの配置転換がひとつのキッカケになったことがよくわかるだろう。
交流戦を前にして最下位というのは、奇しくも昨年と同じ状況。チームと自身の連敗ストップを新たなキッカケとし、さらなる飛躍へとつなげることができるか。原の今後の投球がチーム浮上のカギを握っている。