昨季はサイクル安打を2度記録
現地時間13日(日本時間14日)、エンゼルスの大谷翔平が自身初のサイクルヒットを達成した。
1試合のうちの単打・二塁打・三塁打・本塁打のすべてを記録するという大記録で、実は日本人メジャーリーガーとしても史上初の快挙。3月に引退したイチローですら、日米通じて一度も達成できなかった難易度の高い記録である。
なかなかお目にかかれない大記録であるが、メジャーではそれを昨年だけで2度も達成した選手がいる。ブリュワーズのクリスチャン・イエリチだ。
イエリチは昨年8月29日と9月17日、ともに同じレッズを相手にサイクルヒットを記録。その2試合に代表されるように、昨季後半戦は“無双”の活躍でナ・リーグMVPにも輝いた。個人タイトルは、首位打者(打率.326)の一冠に終わったものの、本塁打はトップと2本差、打点はわずか1点差という三冠王に匹敵する数字を残した。
史上初の“四冠”への期待
そのイエリチは今季も開幕から絶好調。特に6月は月間打率.525(40-21)という驚異的な数字を残しており、相手投手はお手上げ状態だ。昨年惜しくも届かなかった三冠王を狙える位置につけている。
昨季タイトルを獲得した打率部門は、現在「.345」でナ・リーグ2位。.352でトップに立つコディ・ベリンジャー(ドジャース)を僅差で追っている。本塁打部門は、2位に3本差の25本で堂々のトップ。シーズン59本塁打ペースで、2001年以来の60本塁打超えにも期待がかかる。打点部門は、現在「54」でリーグ6位。しかし、トップのジョシュ・ベル(パイレーツ)との差は7点とわずかだ。
直近ではミゲル・カブレラ(タイガース)が2012年に三冠王に輝いているが、それより前はというと1967年までさかのぼる。さらに、ナ・リーグに限れば1937年のジョー・メドウィック(カーディナルス)が最後。イエリチには82年ぶりの大記録達成がかかっている。
そして、今季のイエリチにはメジャーで過去に1人しか達成していない偉業への挑戦権もある。1932年にチャック・クライン(フィリーズ)が達成した「本塁打王&盗塁王」である。
現在、本塁打部門リーグトップのイエリチは、盗塁部門でもリーグトップタイにつけている(14盗塁)。ア・リーグに比べると盗塁王争いはやや低レベルとなっていることも、イエリチには追い風となりそうだ。もし「四冠王(三冠王+盗塁王)」となればもちろんメジャー史上初の偉業となるが、27歳で脂の乗り切ったイエリチなら達成の可能性はあるだろう。
チームも昨季と同じようにカブスとのデッドヒートの様相を呈している(1ゲーム差で首位/現地時間13日現在)。イエリチが四冠に近づくような活躍を見せることができれば、1982年以来のリーグ優勝、そしてチーム史上初の世界一も見えてくるだろう。
文=八木遊(やぎ・ゆう)