極端過ぎる打撃成績
どのチームも70試合程度を消化し、試合数のうえではシーズンの折り返し地点に差し掛かった2019年のペナントレース。今季開幕からここまでのあいだ、野球ファンに強いインパクトを与えてきた選手のひとりが、村上宗隆(ヤクルト)だろう。とにかくスケールが大きな選手で、飛距離も素晴らしい。全国のプロ野球ファンに大きなインパクトを残していることは間違いない。
そんな村上の、これまでの成績はかなり「極端」である。打撃主要3部門の成績をあらためて見てみると、村上の打率は「.229」。リーグワーストの田中広輔(広島)の「.191」とは少し開きがあるものの、これはリーグワースト2位の記録だ。
一方で「55」打点は2位・鈴木誠也(広島)の51打点を抑えて堂々のリーグトップに立つ。また、本塁打もリーグ3位タイの19本と好成績。22本でリーグトップのソト(DeNA)、21本で2位の坂本勇人(巨人)も射程圏内にとらえる。最低打率と本塁打王、打点王を同時に成し遂げるという珍記録を残す可能性も十分に考えられる。
スケールの大きさ
過去、規定打席到達者のうちで最低打率を記録し、かつ本塁打王に輝いた選手は3人いる。1974年のジョーンズ(近鉄/打率.226、38本塁打)、1987年のランス(広島/打率.218、39本塁打)、2011年のバレンティン(ヤクルト/打率.228、31本塁打)だ。
彼ら3人の名前を見て多くの野球ファンがイメージするのは、「本塁打か三振か」というものだろう。事実、先に挙げた3シーズンにおいて、3選手はそれぞれ「三振王」にもなっている。いかにもパワー系助っ人外国人らしい成績である。そして、村上のここまでの三振数は「99」。リーグワースト2位の筒香嘉智(DeNA)の77三振を大きく上回るリーグワーストの数字であり、三振王へとひた走っている。
ただ、ジョーンズもランスもバレンティンも、先述の3シーズンにはそれぞれ打点王とはなっていない。村上が最低打率、かつ本塁打王、打点王、三振王となれば、それこそ史上初の珍記録となる。
ここであらためて認識しておきたいのが、村上がまだ高卒2年目の19歳の選手だということ。それを思えば、今季のここまでの成績は十分過ぎるものであり、本塁打が多い一方で三振が多いことにもなんら問題はない。もし先に挙げた珍記録をつくったとしても、将来的にはそれすらも勲章となり得るだろう。
もちろんこれから徐々に打撃の確実性を高めることができれば、数年後には三冠王すら狙えるような無限の可能性を秘めている選手であることは間違いない。ヤクルトの宝、いや球界の宝にもなり得る村上は、ペナントレース後半戦にどんな打撃を見せてくれるだろうか――。
▼ 村上宗隆の今季成績
試合数:73
打 率:.229
本塁打:19
打 点:55
三 振:90
盗 塁:3
出塁率:.332
長打率:.514
※数字は6月23日終了時点
文=清家茂樹(せいけ・しげき)