白球つれづれ2019~第25回・オリックスの反撃と可能性
今季の交流戦が25日、幕を閉じた。戦前の予想では西武・菊池雄星のメジャー流失、オリックスから西勇輝が阪神にFA移籍などパ・リーグ側の戦力減により、例年よりセ・リーグが浮上するのでは、という見方もあったが、結果はいつも通りに「パ高セ低」で、上位には巨人を除くパ・リーグのチームが名を連ねた。
交流戦の大きな楽しみは、日頃、注目度の低いチームや、スポットの当たりにくい選手が意外な活躍で輝くこと。今年で言えばオリックスがそれにあたるだろう。
11勝6敗1分け。優勝こそソフトバンクに許したものの堂々の2位。パのペナントレースでは最下位に沈む球団が、見違えるほどの強さを発揮した。特に終盤の戦いは目を見張るものがある。18日からの巨人戦、結果は1勝2敗と負け越したものの、山本由伸、榊原翼、K-鈴木の若手先発陣が躍動して、敵将・原辰徳も生きのいい投球に驚嘆した。
続く広島戦には3連戦3連勝。中でも23日の同カードでは、肩痛から復活した田嶋大樹の好投で延長戦にもつれた試合を、延長10回に大量9得点で爆勝。小田裕也、安達了一、後藤駿太、福田周平が放った1イニング4三塁打は、72年ぶりのプロ野球記録に並ぶおまけつきだ。
最終戦となったヤクルト戦では、阪神・西のFA補償で移籍した竹安大知が先発で初勝利。交流戦を通じてみると、ルーキーの中川圭太が打率.386の高打率で新人では初となる交流戦の首位打者に輝き、チームの浮上に貢献している。「PL学園最後のプロ戦士」と呼ばれる中川は、昨年ドラフト7位で東洋大から入団。そんな低評価を覆すように実践的で勝負強い打撃は今やチームに欠かせないピースとなった。
問題点は明確!?
オリックスは96年、名将・仰木彬を擁して日本一になって以来、ペナントから遠ざかっている。気がつけば12球団で最も優勝に縁のないチームになってしまった。
近年はほとんどBクラスが定位置、昨オフには阪神へ移籍の西だけでなく、金子弌大まで日本ハムに移籍。先発の二枚看板を失い、スター不在の「日本一、地味なチーム」と酷評された。監督もこれまた地味な西村徳文が就任。2年連続でオールスターに選出された吉田正尚以外、話題になるのはオーナー・宮内義彦が放つ超辛口激というのも、あながち的外れではないだろう。
予想通りに戦力不足で予想通りの最下位に沈むが、悪い数字だけでなく反撃の兆しとも言えるデータもある。それは「2点差以内のゲーム」での善戦だ。今季のオリックスは終盤までクロスゲームが多いのが特徴としてあげられる。全71試合中「2点差まで」の試合が実に42試合にのぼるが、同条件に限定すると23勝14敗5分け。数字は飛躍的に上昇する。これは何を意味するのか?
チーム防御率3.71は、ソフトバンクに次ぐリーグ2位。前述の生きのいい若手に加え、山岡泰輔がエース格に成長するなど安定感は十分ある。対してチーム打率.230はリーグどころか12球団最低の数字。つまり、投手陣が踏ん張ってクロスゲームに持ち込めば勝機もあるが、打線が抑え込まれれば打つ手なし、が現状だ。
指揮官も「打線が交流戦を通じてしぶとく、最後まであきらめないという姿勢が見えてきた。それが終盤の逆転につながった。この勢いをペナントレースにも生かしていきたい」と交流戦の戦いに手ごたえを感じている。
今春に発表された12球団の年俸調査(外国人選手は除く)によれば、オリックスは全選手総額16億1915万円、同一軍平均4409万円ともに12球団最下位。総額を比較すると、トップの巨人とは実に22億強の開きがある。西、金子らを放出した面も大きいが、チームは若返りに舵を切った証でもある。
こうした数字をあげれば戦力の補強ポイントは明らか。一にも二にも打線のてこ入れしかない。楽天の躍進は、西武から獲得した浅村栄斗の存在と外国人選手の活躍が大きい。
オリックスにも楽しみな素材は多くいる。あとはそれを生かすチームとしての味付けをいかにしていくか?「4強2弱」と言われるパ・リーグ戦線だが、ゲーム差を見るとそれほど離れてもいない。オリックスの戦い次第では、まだまだもつれていく可能性もあるだろう。
文=荒川和夫(あらかわ・かずお)