移り変わる時代と指標の中で
メジャーリーグも開幕から3カ月が経過。各チームがシーズンのちょうど半分にあたる81試合前後を消化し、シーズン折り返し地点を迎えた。そこで各選手の現時点の成績から、シーズン終了時点でどのくらいの個人記録が達成可能かを探ってみた。
完投が絶滅危機を迎えるメジャーリーグにおいて、先発投手の「勝利」の価値は大きく変わっている。それでもチームを勝利に導いたという点で投手にとっては最も目標に挙げやすいのも事実。特に近年は「20勝投手」は減少傾向で、過去5年(2014~18)で合計10人しか達成していない。
今季は現時点で10勝が3人、9勝が8人。この中でも有力候補がジャスティン・バーランダー(アストロズ)だろう。2011年に24勝を挙げた剛腕が8年ぶり2度目の大台に挑む。
▼ ここまで10勝を挙げている投手
10勝:バーランダー(アストロズ)
10勝:オドリッジ(ツインズ)
10勝:ジオリト(Wソックス)
そのバーランダーだが、今季の防御率は2.67で、被打率は両リーグ断トツの「.157」。2000年にペドロ・マルティネスがマークした「.167」というメジャー記録更新の可能性も十分ある。
防御率の部門では、今季無双の投球を続ける柳賢振(ドジャース)に注目だ。現時点の防御率は「1.27」という驚愕の数字を残している。シーズンを通して1点台前半を維持するのは至難の業。もし1.50未満でシーズンを終えれば、史上25人目(37度目)となるが、1920年以降の過去100年だと、防御率1.50未満はたったひとり(1968年ボブ・ギブソン、1.12)しか達成していない。
その柳は今季圧倒的に四球の数が少ない。ここまで99回を投げて、与四球は僅かに6個。一方で三振は90個奪っており、K/BB(与四球1個に対する奪三振数)は「15.00」という数字だ。歴代1位は2014年にフィル・ヒューズが達成した「11.63」で、「10.00」超えはヒューズを含めて過去に4人しかいない。
最後に奪三振部門では、やはり「300」という数字が一つの目安となるだろう。現役でこれをクリアした経験があるのはクリス・セール(レッドソックス)、クレイトン・カーショー(ドジャース)、そしてマックス・シャーザー(ナショナルズ)の3人で、それぞれ1度ずつしか達成していない。
今季この大台突破を狙えそうなのが、シャーザー(現在156奪三振)、ゲリット・コール(アストロズ、現在151奪三振)、そしてクリス・セール(現在148奪三振)の3人。もしシャーザーが達成すれば、昨季から2年連続。最後に2年連続で300奪三振を達成したのは、ランディ・ジョンソンで、1998年から2002年まで5年連続で達成している。
文=八木遊(やぎ・ゆう)