全盛期そのままに
ベテランの奮闘はひいき球団の壁を越えて野球ファンなら誰もがうれしく感じるもの。今季、そんな活躍をしているのが、間もなく39歳となる藤川球児(阪神)だ。
メジャー挑戦から、四国アイランドリーグplusを経て2016年に再び古巣へ戻ってきた藤川。もちろん、復帰後も変わらずチームに欠かせない投手ではあったが、全盛期と比べると、その力はさすがに見劣りするように思えた。ところが、今季はその全盛期を思わせるような投球を続けている。
今季の安定ぶりは、数字にもしっかり表れている。防御率を見れば、2016年から昨季までは順に「4.60」、「2.22」、「2.32」。かつては、防御率1点台はあたりまえ、0点台さえも記録していたことを思えば、物足りなさを感じてしまう人もいるかもしれない。しかし、今季はここまで防御率1.30と、じつに「らしい」数字だ。現時点での藤川の成績は、27試合27回2/3を投げて4勝0敗15ホールド0セーブ、43奪三振、自責点はわずかに4と、抜群の安定感を誇っている。
なかでも注目したいのが、9投球回あたりの奪三振数である奪三振率だろう。その数字は2016年から順に「10.05」、「11.28」、「11.10」、そして今季は大きくジャンプアップした「13.99」だ。この数字は、全盛期並みというよりも、全盛期をもしのぐものである。藤川の奪三振率における自己最高の記録は2011年の「14.12」。今季のここまでの数字は、それに次ぐ自己ベスト2である。
与四球が目立つことが少し気にはなるものの、やはり高い確率で三振を取れることが安定感につながっており、ファンも安心して今季の藤川の投球を見ているはずだ。
山川に全球ストレート勝負
なにより、藤川の代名詞である直球の威力が、昨季までより増しているようにも感じられる。確かに、かつてより球速は落ちたといえば落ちたが、それでもいまなお150キロ台を記録するスピードは健在。そもそも、藤川の直球は球速というよりも独特の伸びこそが生命線。そして、その最大の武器である伸びに関しては、まるで衰えが感じられない。
6月21日の西武戦では、それこそ全盛期をほうふつとさせる姿を見せつけた。1点リードの8回、マウンドに上がった藤川が迎えたのは本塁打ランキングを独走する山川穂高(西武)。その山川を相手に、藤川は全球ストレート勝負を挑み、結果は見事空振り三振。直球の伸びを最大限に生かす、ストライクゾーンの高めに投げ込む勝負で虎党を沸かせた。
開幕からセットアッパーを務めていたジョンソンが蓄積疲労のために出場選手登録を抹消されたのは6月7日。以降、阪神は負けが込んだとはいえ、中継ぎ陣の柱としてチームを支えてきたのは間違いなく藤川だ。
大ベテランながら、中心選手として以前と変わらぬ真っ向勝負を続ける藤川。年齢を考えればそろそろ衰えが見えて当然のはずだが、その予兆すら感じさせない。藤川には、どこまでもその熱い投球スタイルを貫き、ファンを魅了し続けてもらいたい。
※数字は6月29日終了時点
文=清家茂樹(せいけ・しげき)