若手積極起用の阪神に目立つ失策の多さ
今季途中からたびたび報じられているのが阪神の失策の多さ。阪神の73失策は他を大きく引き離した12球団ワーストの数字である。リーグワーストの15失策を犯している大山悠輔の他、北條史也、木浪聖也が11失策でリーグワースト3位と、まだまだ安定感に欠ける若手を積極起用していることの副作用とも言える。
野球というスポーツにおいては、「打撃」と「投球」というふたつの要素に注目が偏りがちだ。とはいえ、「守備」もまた勝敗を左右する大きな要素には違いない。守備力に関しては、打率や防御率といった選手の能力をはっきりと表す指標は多くはないが、そのなかでもっともわかりやすい成績となると、やはり失策数になるだろう。
では、チームの勝敗と失策数にはそもそもどれほどの関連があるのだろうか。現在、各リーグの首位に立つのは巨人とソフトバンクだ。巨人の失策数は「49」。リーグにおいて失策数が最少のチームを1位とすると、巨人は3位にあたる。一方、ソフトバンクは「41失策」でリーグ2位。もう少しサンプルを集めるため、過去10シーズンにおいて、レギュラーシーズン1位となったチームの失策数とそのリーグ順位を見てみる。
【リーグVチームの失策数・順位】
▼ 2018年
セ:広島(83失策/4位)
パ:西武(74失策/6位)
▼ 2017年
セ:広島(68失策/3位)
パ:ソフトバンク(30失策/1位)
▼ 2016年
セ:広島(67失策/3位)
パ:日本ハム(65失策/2位)
▼ 2015年
セ:ヤクルト(71失策/1位)
パ:ソフトバンク(68失策/1位)
▼ 2014年
セ:巨人(71失策/1位)
パ:ソフトバンク(69失策/3位)
▼ 2013年
セ:巨人(62失策/1位)
パ:楽天(63失策/1位)
▼ 2012年
セ:巨人(77失策/4位)
パ:日本ハム(72失策/1位)
▼ 2011年
セ:中日(83失策/6位)
パ:ソフトバンク(51失策/1位)
▼ 2010年
セ:中日(91失策/5位)
パ:ソフトバンク(75失策/2位)
▼ 2009年
セ:巨人(84失策/2位)
パ:日本ハム(55失策/1位)
過去のリーグVチームは失策も少ない!?
こうして見てみると、ペナントレースにおける順位と失策数には一定の関連があるといえそうだ。2017年にパ・リーグを制したソフトバンクはわずか30失策。当時も話題を集めたことを覚えているファンも多いだろう。そのソフトバンクをはじめ、延べ20チームのうち失策数がリーグ1位だったのは9チームと約半分を占める。平均順位は2.45位であり、失策数でもしっかりと「Aクラス」入りを果たしている。意外なところというと、2015年のヤクルトだろうか。その年のヤクルトは強力打線に注目が集まったが、その裏で堅守も誇っていた。
一方で失策数がリーグワーストながらリーグVを果たしたのは2011年の中日、昨季の西武とわずか2チームだけ。2011年の中日はチーム防御率2.46が示すように、吉見一起、浅尾拓也ら投手陣の踏ん張りで勝ち進んだ。一方、昨季の西武といえば、いうまでもなく破壊力抜群の打線が最大の勝因だ。そうなると、失策数の多さを強力な他の要素によってカバーできなければ優勝はなかなか望めないといえそうだ。
今季、現時点で各リーグの失策数1位となっているのはセ・リーグが29失策の中日、パ・リーグが34失策の楽天である。ペナントレースではBクラスに甘んじている両チームだが、果たしてここから逆転Vに持ち込めるだろうか。
※数字は7月21日終了時点
文=清家茂樹(せいけ・しげき)