苦しいチームの明るい未来!?
現在52勝78敗でア・リーグ東地区4位に沈むブルージェイズ。すでに若手野手を中心に来季に向けて再建中の身だ。
そのチームの将来を担うと期待されているのが、ウラジーミル・ゲレロJr.、ボー・ビシェット、そしてキャバン・ビジオの3人。いずれも父が同時期にメジャーで活躍した2世選手だ。3人はすでに上位打線を任されており、しっかり結果も残している。
ビジオは、3人の中では比較的注目度が低いが、5月下旬にメジャー初昇格を果たすと、一度もマイナーに降格することなく、父を彷彿させる2番二塁手として定着している。しかし1年目の成績はというと、出場71試合、打率.206、10本塁打、31打点と、順調な滑り出しとは言い難い成績だ。
それでも選球眼には定評があり、打率の低さを考えると、出塁率.328は、まずまずの数字だ。さらに9度の盗塁企図を全て成功させるなど、脚力とその走塁センスも魅力の一つ。
そのビジオが5月のメジャーデビューから続けているのが併殺打「0」という地味に難易度の高い記録。現地時間22日の試合を終えて、今季の打席数がちょうど「300」に達した。現在メジャー全体で300打席以上の選手は232人いるが、併殺打「0」はビジオとブリュワーズのエリク・テムズ(349打席)の2人だけとなっている。
主に2番を務め、無死一塁など併殺機会の打席も多いが、一度も併殺打に仕留められていないのは、野球センスの高さなのか? それとも生まれ持った強運によるものなのか?
すべての打席を見ているわけでもないので、その答えはわからないが、2015年に野球殿堂入りを果たした父のクレイグも併殺打にまつわる、過去80年で1位という記録を持っている。父クレイグがまだ全盛期の1997年、31歳の時に併殺打「0」でシーズンを乗り切ったことがあるのだ。
クレイグはこの年、両リーグトップの744打席に立っていたが、この数字は1938年以降で併殺打「0」の打者の中で最も多い打席数。父は右打者ということもあり、キャリアを通して見ると決して併殺打が少なかった選手というわけではない。ところが97年シーズンだけは違ったようだ。
果たして息子のキャバンは22年前の父のように併殺打なしで、メジャー1年目のシーズンを終えることができるのか、はたまたどこまで数字を伸ばすことができるのか――。残りわずかとなったシーズンの楽しみ方は様々だ。
文=八木遊(やぎ・ゆう)