自らバースデーを祝う一撃
8月28日(水)の横浜スタジアム。DeNAは4点を先行するも、4回・5回の2イニングで5点を奪われてひっくり返される苦しい展開。そんな重苦しいムードを振り払ったのが、この日31歳になった“背番号3”のバットだった。
4-5で迎えた6回裏。一死走者なしの場面で代打で登場した梶谷隆幸は、ヤクルトの2番手・高梨裕稔が投じた2球目、真ん中に入った速球をフルスイング。最後は片手一本の形となるも、居合斬りのように振り抜かれたバットに乗った打球は、高々と舞い上がって右中間スタンド後方に着弾した。
取られたら取り返す――。反撃の姿勢を見せたDeNAは直後の7回表に勝ち越しを許すも、8回に神里和毅の適時打で再び追いつき、試合はそのまま延長戦へ。両軍決め手を欠いたまま迎えた12回裏、二死満塁から山本祐大がライトに弾き返すサヨナラ打を放ち、5時間に迫る死闘を制した。
8月24日、巨人にマジックが点灯。ついに優勝へのカウントダウンがはじまったセ・リーグだが、DeNAも必死に食らいつき、現在のところゲーム差は「5」。8月28日終了時点で巨人のマジックは19と、カウントダウンの進行をなんとか阻止している。
このあとは9月10日まで巨人との直接対決はないものの、そこから9月後半にかけて6試合の直接対決を残しており、諦めるのはまだ早い。ここから9月半ばまで、いかにして巨人に食らいついていけるかというところが大きなポイントになってくる。そんななか、起爆剤となる選手の登場が待たれるチームに梶谷が帰ってきたというのは、大きなプラス要素と言えるだろう。
二軍で月間打率.400をマーク
今年でプロ13年目を迎えたハマのスピードスター。開幕こそ「1番・中堅」でスタメンを勝ち取るも、3連戦で15打数1安打と結果を残すことができず。スタメン落ち、そして4月8日には登録抹消となってしまう。
その後、4月24日には一軍復帰を果たしたものの、ここでも定着ならず5月6日からは再び二軍へ。代打が中心で結果が残しにくい起用法ということもあったが、10打数無安打とチームの力になることはできなかった。
以降はなかなか一軍から声がかからない日々が続いたが、腐ることなく二軍で奮闘。6月に月間打率3割をマークすると、7月はやや数字を落として.269と苦しんだものの、8月は30打数12安打の打率.400、2本塁打と復調。2度目の抹消から3カ月以上が経った8月23日にようやく一軍復帰を掴んだ。
逆転優勝の使者になるか…
迎えた復帰初戦は首位を走る巨人との一戦。「1番・右翼」でいきなりスタメンに名を連ねると、2回に桜井俊貴から今季1号2ラン。この日は一発を含む2安打に1盗塁をマークするなど、久々の一軍の舞台で躍動して見せた。
翌日も1安打・1盗塁と結果を残すと、28日の試合では代打からの登場で一発。そのまま試合に入って2安打をマークするなど、3度目の昇格にしてようやく良い形で一軍部隊に入ることができた。宮崎敏郎という打線の中軸を欠くなか、打って走れる男がチームに加わったことは非常に大きい。
離脱者の穴は現有戦力で埋めるしかない終盤戦。とはいえ、ホットコーナーを任せられて打てる選手というとなかなか埋まらない。そこで、チームは主砲の筒香嘉智を三塁に置き、外野の枠を空けて梶谷や細川成也を入れたり、ネフタリ・ソトを外野に回して伊藤裕季也を二塁で起用するなど、相手との関係も見ながら様々なオプションを試している。
プレッシャーのかかる終盤の上位争いにおいて、怖いもの知らずの若手の勢いというのも重要だが、やはりここ一番で頼りになるのは経験豊富なベテランの力。梶谷はベテランと言っても1988年生まれの31歳とまだまだ老け込むには早い年齢であり、この最終盤での爆発に大いに期待がかかる選手であることは間違いない。
奇跡の逆転優勝へ、梶谷はDeNAの起爆剤となれるだろうか。